「目立ちたくてやっているんじゃないのですか?」と尋ねたら、佐田さんは即座に否定した。

「あんなこと、やりたいわけないじゃないですか! 僕はもともと人前に自分から出ていこうという性格ではないんです。でも、ここまでやって途中から人が変わったらおかしいでしょ? いつのまにかライフワークの一環になってしまいましたよ」

佐田さんはスーツチャレンジのために、毎日のトレーニングと体脂肪計測を欠かさず行っている。

オーダースーツ店に並べられたボタンの見本
撮影=プレジデントオンライン編集部
オーダースーツ店に並べられたボタンの見本

「スーツ離れ」の中で右肩上がりの成長を続ける企業に

YouTubeの効果もあり、オーダースーツSADAは順調に売り上げと店舗数(46店舗、2024年3月末時点)を伸ばした。100周年を迎えた2023年には、売上も前年同月比は全月150%から400%と、右肩上がりだ。

新型コロナウイルスのパンデミックを経て在宅ワークが定着し、スーツ業界全体が縮小傾向にあるなか、オーダースーツに限っては、どの会社も売り上げが伸びるという現象が起きている。いまでは既製スーツの大手メーカー、青山、AOKI、コナカらも次々と低価格なオーダースーツに力を入れるようになった。

「パンデミックは確かにスーツ業界にとっては大きな痛手となりました。しかし本来ビジネススーツがおもてなしアイテムだということを、人々が改めて認識する機会にもなりました。ビジネスの場では、ビジネススーツは最上級の『敬語』と同じ。自分と会う時間を作ってくれた相手に感謝と敬意を伝えるアイテムなんです」

この取材の一週間後にも、佐田さんは重要なビジネスミーティングに出席しなければならない。場所はニュージーランドの滝の中、相手に敬意を表すためにもスーツ着用は必須だ。

3時間の取材中常に背筋を伸ばして話をしてくれた佐田さんに、最後に一つ、聞いてみた。今、天国のお祖父さんに会ったとしたら、何と言われると思うかと。

「今だったら祖父は『よくやった』と褒めてくれるかもしれませんね。ただ、後進に事業を引き継ぐまでが、私の仕事ですから」

祖父の教えを守り、自ら選んできた「茨の道」。SADAのオーダースーツの耐久性と運動性を確認するために、これからも佐田さんはその道をゆく。

ビジネススーツは「相手に感謝と敬意を伝えるアイテム」と語る佐田さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
ビジネススーツは「相手に感謝と敬意を伝えるアイテム」と語る佐田さん。これからもSNSを通じてスーツの意味を若い世代に伝え続ける
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