海外では仮想空間でシミュレーションができるのに…

しかし、CAM(Computer Aided Manufacturing =コンピュータ支援製造)というプログラムがあれば、機械に読み込ませる加工パスがあっという間に生成されて、手作業でコード入力する必要がなくなります。

打ち間違いが起きないだけではありません。事前にシミュレーションもできるので、想定していた工程のどこかに問題があったとしても、作業前に修正できます。ただし、このCAMを使うにも、CADによる三次元データが必要です。二次元データでは使えないということです。

aPrioriなどのソフトを使用できるようになることもそうですが、CADによる三次元データの応用範囲はとにかく広いと言えます。

ヨーロッパではCADを使った新しいソリューションが次々に生まれてきています。「デジタルツイン」はその最たる例です。コンピュータ上に、現実世界と同様の仮想空間をつくりあげ、シミュレーションを行う技術です。

3D CADソフトウエアを使用しているコンピューターのディスプレイ
写真=iStock.com/gorodenkoff
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商品開発や製造ラインの最適化や変更など、さまざまな部分で活用していけます。デジタルツインを使えばサイバーフィジカル上で、何回も仕様変更が可能です。現実世界のすり合わせでは、実物を動かす必要がありますが、デジタル上では何度でも簡単に仕様を成熟させることができます。

このままではドイツやフランスにも後れをとってしまう

ドイツ最大級の電機メーカーであるSiemens(シーメンス)やフランスのSchneiderElectric(シュナイダーエレクトリック)などはデジタルツインを使った取り組みで最先端を行く企業です。

CADを生かすことで、ヨーロッパの製造業は次のフェーズに入っていると見ることもできます。

製造業関係では世界最大級の展示会である「ハノーファーメッセ」に行けば、デジタルツインを使った取り組みが紹介されているなど、日本との差が開くばかりになっているのが痛感されます。そういう場所に日本の企業から視察に来ている人が少ないのも危機感のなさの表れと見るしかありません。

デジタル化によってもたらされる変革は想像を超えるものがあります。世界がそういう動きを見せているにもかかわらず、いつまでも二次元データでやり取りをしているのはあまりに時代錯誤です。

あらゆる可能性を閉ざすことにもなっています。