100人がかりで超非効率なことをやっている
つまり、部品1個1個の本質的なコストについて、BOMではなく、二次元図面に対して情報を集約してしまうため、原価のフィードバックが正しく行われない。経営上、正しい設計であったのかがわかりません。部品やモジュールの本質的な原価が瞬時にわからないので、素早い経営判断ができないのです。
また、CADデータに対応しているソフトは何種類もあります。
たとえば、「aPriori(アプリオリ)」というソフトを使えば、三次元データを読み込み、製造プロセスなどを考慮したコスト計算ができます。ネジを1本増やせば現場の工数がどれだけ増えるかといったことも瞬時に算出されます。
これまで人が頭を悩ませていたことを簡単にシミュレーションできるようになっているのに、二次元図面では、こうしたソフトも使えません。
メリットはなくデメリットばかりになることを100人がかりでやっているわけです。
なぜ、いつまでもそんなことをしているのでしょうか……。さまざまな事情があることは『日本メーカー超進化論 デジタル統合で製造業は生まれ変わる』(KADOKAWA)でも解説していますが、理解しづらいような話であるのは確かです。
数千文字のコードをポチポチ打ち込んでいる
異なる事例で、デジタル化の遅れを紹介したいと思います。
製作現場では、工作機械を使って金属を削るような作業がつきものです。その際、工作機械に対しては、どこまで削ったらどちらへ向きを変えるかといった指示を出します。
これを「制御」といいます。そのために何をするかといえば……。
従来であれば、CNC(Computer Numerical Control =コンピュータ数値制御)というプログラムにGコードと呼ばれるものを打ち込むやり方が主流でした。G0からG99までのコードを組み合わせていきますが、それによって加工の開始点や停止点、動作、順番などを指定し加工パス(工具が動く動線)を作成します。
Gコードを打ち込むには、アルファベットと数字が書かれたボタンを一文字ずつ指で押していく必要があります。
タッチパネルなどではなく、昔のレジスターのようなボタンをイメージしてもらうといいかと思います。
コピーペーストなどはできず、数千文字をポチポチと指で打ち込んでいかなければなりません。一文字でも間違えば、機械が間違った指示に合わせて動きます。主軸がぶつかるような事故も起きがちで、そうなれば修理代には数百万円かかることもあります。慎重さを要する大変な作業です。