RTDが売れる背景に「世界的なビール離れ」

RTDが成長している要因は、「ビール消費が後退している」(ビールメーカー首脳)ことが大きい。「特に先進国では、苦いビールではなく、甘いRTDを手にする若者が増えている。世界のビール最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)でさえ、RTDに力を入れている。『本当は、RTDなどやりたくはない、ビールが売れないから仕方なくやっている』とABインベブの幹部は話していました」(ライバルの酒類メーカー幹部)と指摘する。
ビール消費が減少した分を、RTDが汲み取って伸ばしている構図だが、トレンド変化が早いのはRTD市場の特徴。
サントリーは、2030年に世界のRTD市場は約500億ドルになると、予想している。現在、ビームサントリーとして世界の中では上位につけている。サントリーにとって、ビールでの世界進出は、かつては上海で成功を収めたものの、いまは難しい。
また、世界で評価の高いウイスキーは原酒不足が継続している。こうしたなか、発泡性低アルコール飲料であり原酒を大阪工場で生産できるRTDをもって、サントリーは世界の覇権を握ろうとしている。

――サントリーは戦前の「赤玉ポートワイン」、さらにウイスキーの「角瓶」と、日本人の嗜好に合わせた酒をつくるのが伝統的に得意です。酒類ではないけれど、「カリフォルニアロール」はアメリカ人の嗜好に合った寿司です。ワイン、ウイスキー、そして寿司も、それぞれに原点があります。しかし、歴史の浅いRTDには原点がない。

それだけに、RTDへの参入障壁は低く、清涼飲料の会社などからも、たくさん入ってきています。競争は激化している。

日本伝統の洋酒+現地化で世界一を目指す

――半導体や二次電池、さらに電気自動車と、先端分野のモノづくりで日本は負けが続いています。酒は各国の文化にも通じる。その国の文化、さらには生活する人々に、どこまで寄り添えるかは、商品開発のポイントになります。

文化に通じる需要創造は求められますね。RTDは開発の自由度が高い。イノベーションを起こしていく一方で、100年を超える洋酒づくりで培った技術と知見、さらに清涼飲料事業で培った香味づくりのノウハウもある。

一方、バーチャルカンパニーであるRTDカンパニーは100人以下の陣容で、事業に関わるマーケティングのトップやバイスプレジデントは外国人が務めています。ダイバーシティ(多様性)を推し進めるチーム。各国の文化と直結するRTDにおいても、世界のエリアごとの価値を提供していきます。

サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長
撮影=門間新弥
サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長
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