豪州を舞台にサントリー、キリン、アサヒが激突

――オーストラリアでは、-196のテレビCMは相撲が出てくるなど、日本の商品であることを前面に打ち出しています。

オーストラリアは親日国であり、日本製品への信頼度は高い。日本をイメージさせる相撲をCMに使い、-196のパッケージにも「ダブルレモン」、「ダブルグレープ」と、あえてカタカナを印字しています。日本という文脈を生かしているのです。

また、サントリーは2014年にビームを買収する以前から、業務用を中心にRTDを手掛けていたのです。なので、現地でのなじみはそれなりに深い。

サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長
撮影=門間新弥
サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長

――キリンが「氷結」をもってオセアニアでのRTD事業強化を打ち出しています。また、アサヒが20年に約1兆1400億円で買収した、オーストラリア最大のビールメーカー、カールトン&ユナイテッド・ブリュワーズ(CUB)はRTDを販売している。オーストラリア市場をめぐり、日本の大手3社が激突する様相です。

日本メーカーに限らず、みんな入ってきてます。-196とパッケージデザインが似ている商品を出す現地メーカーもあるほど。

巨大なアメリカ市場でどう戦っていくのか

キリンは氷結(レモン)を、昨年8月からオーストラリアで、9月からはニュージーランドで販売開始。氷結の価格は-196と同じ。「夏の最盛期に向け10缶パック取扱店拡大に取り組み、計画値を7%超過した。今年は新フレーバーを発売する。そもそも、ベース酒にウオッカを採用したRTDは、(2001年発売の)氷結が最初。各社が追随し、ベース酒が甲類焼酎からウオッカに変わったことで、国内RTD市場そのものが成長した」(キリン)

――(オーストラリア東部の)ブリスベン郊外に清涼飲料とRTD工場を建設していますが、RTDの現地生産が始まるのはいつ頃ですか。

清涼飲料の工場を建設した後になります。自社工場によるRTDの生産開始は2025年にできればと、考えます。現在は“紅海問題”などから、資材の調達面などで影響を受けている。

――最大市場のアメリカは、どうしていくのでしょう。

アメリカのRTDは、酒税法から①スピリッツベースと、②モルトベースに分かれます。前者は蒸溜酒に分類され高税率で高価格(1缶約2.5ドル)。販売できる店舗にも制限がある。後者はビールに分類されて低税率で低価格(同約1.7ドル)。ビール卸が扱い、スーパーなど幅広い小売で販売しています。