豪州版は「あっさりレモネード」のような味

実は、アメリカ版とオーストラリア版の-196を、筆者は飲み比べてみた。確かに、日本のそれと比べ、果汁感は少なく感じられた。取材に同行した編集者も、「アメリカ版はあっさりした口当たり。ハードセルツァー(フレーバー付きのアルコールの入った炭酸水)のようで、日本のレモンサワーをさらに炭酸で割ったような薄味」と表現していた。
一方、オーストラリア版はどうか。全体的には日本の缶チューハイに近いものの、レモンの甘みがより目立つ感じがした。「レモンサワーというより、あっさりしたレモネードサワーのよう」(編集者)
あくまで「個人の感想」である。また、ハードセルツアーとは、コロナ禍前の2018年~19年にアメリカでムーヴメントを起こした。若者に人気で、低糖質、低カロリー、低アルコールが特徴。日本でもキリンやアサヒ、サッポロなどが一時商品化したが、ヒットにはならずいずれも終売した。
(右から)サントリー「-196」のオーストラリア版(330ml)とアメリカ版(355ml)
撮影=門間新弥
(右から)サントリー「-196」のオーストラリア版(330ml)とアメリカ版(355ml)。いずれも日本のものより甘さを感じた

――サントリーがトップに立っているというオーストラリア市場は、どんな状況なのでしょうか。

オーストラリア市場は22年で、前年比7%増の4100万ケース(1ケースは9リットル)。22年のサントリーは同17%増の950万ケースを販売しました(シェアは約23%)。23年も市場の成長率は1桁だったのに対し、サントリーは2桁成長をした。数量でも金額でも、サントリーはトップにいます。

発売から1年でライトRTDの代表格に

オーストラリア市場は、ウイスキーなどをベース酒にしたダークRTDが主流でした。そこに、ウオッカをベース酒にしたライトRTDに入る-196を21年5月に発売。22年には100万ケースを達成。ライトRTDカテゴリーそのものを拡大する牽引役になりました。

金額ベースでの2022年オーストラリア市場は、約44億ドル。ライトRTDは8.76億ドルで20年からの年平均成長率は20%、ダークRTDは18.41億ドルで同6%増。規模はダークだが、成長性はライトという構図だ。
なお、残りの約13億ドルはハードセルツアー、ジンジャービアなど。-196はアルコール度数6%であり、レギュラー缶(330ml)が6豪ドル(1豪ドル98.77円で約592円)。酒税などから日本に比べRTDの価格は高い。
「(サントリーには、酒と果汁、フレーバーなどを)混ぜ合わせる技術があるから、オーストラリアで-196は強く支持されて、現地でスケールメリットを得た。サントリーの混ぜ合わせる技術は世界一」(新浪社長)という。

――オーストラリアやアメリカ向けでも、日本と同じような消費者調査を行い、味やパッケージを決めたのでしょうか。

その通り。日本と同じように徹底して嗜好を調査します。-196の前に別の商品をつくったけれど失敗しました。失敗を反省して、腹をくくって大きなマーケティング投資に踏み切りヒットにつなげた。

サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長
撮影=門間新弥
サントリーRTDカンパニーの仙波匠社長