長年愛される店になるために

びっくりドンキーの前身となる「ハンバーガーとサラダの店・べる」(岩手県盛岡市)が開業したのは1968年だ。長年続く店になるには顧客の世代交代も欠かせない。

将来の顧客となる子どもたちに人気なのが「もぐチャレ‼」という企画だ。

「きちんと残さず食べたら1回目のチャレンジ成功で小さな表彰状を渡し、2回目のチャレンジ成功で前回もらった表彰状にふたつ目のスタンプを押印。3回目の来店時に2回成功した表彰状を見せるとデザートをプレゼントする企画です。

子どもたちの『残さず食べる』を応援するために始めました。好き嫌いをなくすことで健康に貢献し、食べ残しが減ることで地球環境にもやさしい。年間約45万人以上のお子さまが参加してくれています」(堀さん)

子ども時代の外食体験は、大人になっても覚えていることが多い。小さい頃は家族や親戚に連れられてきた店に、成長すると友達やカップルで訪れる人もいる。店側は、時に「何らかの楽しい体験」を用意するのも大切なようだ。

人気メニュー堂々の1位はチーズバーグディッシュ
画像提供=アレフ
人気メニュー堂々の1位はチーズバーグディッシュ

消費者は意外と業態を気にしない

最後に、少し引いた視点で「消費者の外食」について考えてみたい。

筆者は20年近く、カフェをはじめとする外食店を取材してきたが、現代の消費者(受け手)は、送り手(店や企業)が思うほど業態を気にしない。その時の自分の気持ちや予算(使いたい金額や許せる価格)にピンとくれば、気軽に利用する。

2013年に大ヒット商品となり、消費生活に浸透した「コンビニコーヒー」が代表例だ。最大手のセブン‐イレブンが「セブンカフェ」で仕掛けて大ヒットすると、競合も追随して一大勢力となった。この事例は業態を超えた象徴だと筆者は考える。コンビニ店内のイスに座ってコーヒーを楽しむ消費者は、小売店で飲食している意識はないだろう。

びっくりドンキーがコロナ禍で行ったのは、「店側の思い込みをひとまず横に置く」姿勢だった。「レストランだからランチ以降の来店客で勝負」ではなく、「朝からハンバーグを食べたい人(モーニング)も、自宅でハンバーグを食べたい人(テイクアウトやデリバリー)も一定数いる」ことがわかった。

それまで、びっくりドンキーの利用頻度は平均して「3カ月に1回」だったと聞く。その来店頻度を増やすのにも注力した結果、「みそ汁が人気ベスト3」になるなど、新たな需要が生まれたのだ。

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