日本人「仏教徒31%」と「仏壇保有率72%」不一致の謎

2018年にNHK放送文化研究所が実施した「ふだん信仰している宗教」との設問で、「信仰している宗教はない(無宗教)」は62%だった。前回調査の2008年では61%だったので、ほぼ横ばいである。米国と比べると、はるかに無宗教率が高い。

ほかの項目では、「仏教」が31%(前回33%)、「神道」3%(前回同じ)、「キリスト教」1%(前回同じ)、「その他の宗教」1%(前回同じ)となっている。

鵜飼秀徳『絶滅する「墓」 日本の知られざる弔い』(NHK出版新書)
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本調査で興味深い項目が「仏壇の保有率」だ。仏壇を保有しているということは、そのイエ(先祖代々)が仏教徒であることを証明している。戦後間もない1951年調査では、80%の家庭で仏壇を保有していた。それが、1998年で71%、2018年では72%と以前よりも仏壇保有率が減少してきている。背景には、仏間をもたないマンション住まいの核家族の増加がありそうだ。

矛盾するのが、先のデータで「日本人の31%が仏教徒」と示したことと、「仏壇保有率72%」が合致しない点だ。前者の数字はあくまでも「仏教徒と自認している」割合である。日本人の場合、「うちのイエは先祖代々からどこかのお寺の檀家(仏教徒)であるが、『私という個人』では仏教徒を自認はしていない」ということだろう。

さらにいえば、親の死をきっかけに、墓や仏壇を受け継いで初めて、「仏教徒を自認する」のが日本人なのである。表面的な信仰は薄いようにみえるものの、実際は多数が仏教徒、という不思議な民族なのだ。