もちろん中には“うまくいかない”パターンもあると思うが、優秀で力のあるクリエイターの場合、ちゃんと「自分の立ち位置」を見極め、成功をつかむケースが多い印象だ。

元テレ東の佐久間宣行氏はその最たる例だ。佐久間氏が入社した1999年当時はインターネットが著しい発展を遂げていた時期にあたる。佐久間氏はネットを通じて自己発信をすることに長けていた。

ニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」オフィシャルサイトより
画像=ニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」オフィシャルサイトより

時代の潮流を読みながら常に情報をアップデートし続け、視聴者を飽きさせない。テレ東を辞めたのは拡張し続ける彼のフレームがテレ東に収まりきらなくなったからで、自然の流れだ。ラジオ、配信、ドラマ、司会業、そしてCMにまで進出している佐久間氏の収入はもちろん、うなぎのぼりだろう。

前述の村上徹夫氏は、「いまは先行投資のとき」と語る。収入は下がった。しかし、それは「想定内」だ。制作会社をスタートアップさせることはいわゆる「起業」である。起業1年目でいきなりもうけることはできない。しかも制作会社は番組作りをする間の費用は持ち出しで、局から「放送翌月末払い」されるのが普通だ。ディレクターやADなどの人件費もかかるし、人材育成のための「カネ」も必要である。

吉野氏や村上氏のように、テレビ局を辞めて得るものは「カネ」ではなく「精神的なメリット」という人も多いのではないだろうか。とにかくテレビの仕事は忙しい。ストレスも大変なものだ。そこからいったん離れて、自分をリセットするきっかけとなるのであれば、そのメリットは「カネ」にはかえられない。

テレビ業界にとっては大問題、テレビマンには夢のある話

テレビは今、未曽有の「人材不足」に陥っている。それには「人材流出」という現象が影響していることはこれまで述べたとおりだ。そんな現状を目の当たりにしているからこそ、若者たちは制作現場を目指さない。

田淵俊彦『混沌時代の新・テレビ論 ここまで明かすか! テレビ業界の真実』(ポプラ新書)
田淵俊彦『混沌時代の新・テレビ論 ここまで明かすか! テレビ業界の真実』(ポプラ新書)

入社面接をおこなっていたとき、私はエントリーシートの希望部署に「制作」と書いている学生がいかに少ないかと驚いた。そんな若者たちにも言いたい。

テレビ局員でいること、それは大きな仕事をできるということだ。会社のカネを使って作りたい番組を作れる。YouTubeであれば数万円でやらなければいけないことも、作品によっては何千万円、何億円という制作費が出る。一度はそういった仕事をしてみるのもいいのではないか。

いまは、かつての「終身雇用」の時代と違う。これからは、テレビ局で「ヒト」と「カネ」の使い方をしっかりと学んだ優秀な人材が、数年たったらどんどんテレビから出て、ほかの映像業界やまったく違う仕事をするようなケースがますます増えるだろう。とても夢のある話ではないか。

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