身近な英単語にはどのような由来があるのだろうか。元高校教師の清水建二さんは「ハネムーンはゲルマン人の花嫁の最初の仕事が1カ月間のハチミツ作りだったことに由来する。英単語の語源にはヨーロッパや世界の歴史が隠れている」という――。
※本稿は、清水建二『英語は「語源×世界史」を知ると面白い』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
ハネムーンは「ハチミツ酒を飲む習慣」に由来
牧畜を主な生業とするゲルマン人は狩猟や農業も行っていたが基本的には肉食であった。
彼らが飲む酒は「ミード(mead)」と呼ばれるハチミツ酒であった。
ハチミツは水に混ぜて放置していると自然に発酵しアルコールになるので、農耕が始まる以前からあった世界最古の酒だと言われている。
一説ではクマが荒らしたハチの巣に雨水が溜まり、たまたま通りかかった狩人が飲んだことに始まるとも言われる。
「新婚旅行」の「ハネムーン(honeymoon)」という言葉は古代ゲルマン人が結婚後30日間、ハチミツ酒を飲む習慣があったことに由来する。
つまり、「honey(ハチミツ)+moon(月)」=「蜜月」が語源である。
ゲルマン人の花嫁の仕事は「ハチミツ作り」
夫の家に嫁いだ花嫁の最初の仕事は1カ月間家にとどまり、ハチミツを作ることであったが、ハチミツには強壮作用があり、ハチの多産にあやかるためのものでもあった。
中世のイギリスでは、honeymoonという言葉は、月の満ち欠けのように、新婚夫婦の愛情と優しさに満ちた期間もすぐ変わってしまうことを伝える警句として使われていたもので、「新婚旅行」の意味で使われるようになるのは19世紀に入ってからのことである。
honeymoonは特に政治の世界では文字通り、最初の親密な関係を表す「蜜月期間」の意味でも使われ、“The honeymoon is over.(蜜月期間は終わった)”のように、すぐに終わってしまうことを示唆する否定的ニュアンスの表現である。