「諸悪の根源」が罰ゲームを生み出しているわけではない

2つ目の、「現場のマネジメント・ループ」では、中間管理職が部下の行動管理を厳格に行ってしまうマイクロ・マネジメントの問題が生じます。負荷が増大し、仕事が忙しくなった管理職が、マイクロ・マネジメントを強め、部下を思い通りにコントロールしようとするのです。すると部下は「指示待ち」や「批判的な行動」を取るようになり、結局、管理職の負荷は増大していきます。

3つ目の「管理職人材不足ループ」では、業務量が増加し、部下の育成に手が回らなくなった管理職が、自分でやるしかない状況に陥ります。その仕事ぶりは、部下の「管理職になりたくない」という意志を強めることにつながります。それにより「後継者候補の優秀人材を選抜できていない」という問題意識が(人事部門に)生じます。これは「人事の個別対処ループ」の「マネジメント・スキル不足の認識」に直結していくことになります。

この3つのループがまるで永久機関のようにずっと回り続け、次々とバグ(課題)を生み出し、現場の管理職の負荷が上がり続けているのが、バブル崩壊後の日本企業です。このループのどこかを止めない限り、流れは永遠に続いてしまいます。

この構造が理解できれば、管理職の「罰ゲーム」には「ラスボス」が存在しないということも同時に理解できます。諸悪の根源のような存在がこのゲームのバグを創り出しているわけではありません。「管理職が大変だ」という問題の背景にある、こうした全体像を理解していなければ、間違った対処を続け、この構造を抜け出すことはできないでしょう。

チェックリストで「罰ゲーム化」の度合いを見極める

さて、ここまで読んだ読者の方々が気になるのは、「管理職の『罰ゲーム化』が自社でどの程度起こっているのか」という点だと思います。そこで「兆候」となる現象を一覧にしたチェックリストを作成しました(図表6)。

その問題と紐付きやすいカテゴリもまとめました。自社や職場において、リストにあるようなことが多く起こっているほど、管理職の「罰ゲーム化」は深刻な状態まで進んでいると考えられます。

小林祐児『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)
小林祐児『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)

一方で「罰ゲーム化」現象に対する職場の耐性はそれぞれです。「ここまではOKで、ここからはNG」と一律の基準を設けられるものではありません。耐えられるストレスの範囲が個人によって異なるように、職場における負荷の許容量も当然異なります。ですので、チェックリストは、自社の「過去からの変化」を中心に確認していくことをおすすめします。

管理職の「罰ゲーム化」は、ロング・トレンドとともに進行しています。そのチェックが自然と解消されていくことは少ないでしょう。なお、チェックリストのうち、自社の実態がわからない項目には「?」をつけてみてください。

自社の管理職や職場の状況について、人事や経営は意外と把握できていないことも多く、それ自体が大きな問題です。放置しておくと管理職の「罰ゲーム化」は潜在化していき、いつまで経っても問題解決の入り口にも立てないでしょう。ぜひ、「チェックマーク」の数とともに「?」の数もチェックしてみてください。

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