「ビクビク系」を怯えさせる“厳密な指示”

やはり予想通り、「ビクビク系」「言うこと聞かない系」の行動は、管理職の負担感を増大させていました。例えば、些細なことまで逐一報告する配慮的な行動や、言われたことに従わず反抗的な態度をとる批判的な行動……。管理職がため息をつきたくなるのは、部下がこういう行動ばかりとるときでしょう。

一方で、唯一負担感を下げていたのは「先回り系」の部下行動です。上司が指示すれば意図を汲んで率先してやってくれる積極的な部下の行動によって、管理職の負担は軽減されます。これらは、誰しもが納得する結果でしょう。

本題は、管理職のどのようなマネジメント行動が「ビクビク系」「言うこと聞かない系」「先回り系」の部下行動を引き出すのかということです。上司の部下マネジメントの行動を「信頼する・認める」と「臨機応変に対応する」、「厳密に指示する」の3タイプに分類し、それぞれの行動が部下の行動にどのような影響を与えているかを分析しました(図表1)。

すると、「厳密に指示する」マネジメントは、「先回り系」の部下行動にややつながるものの、「ビクビク系」と「言うこと聞かない系」の部下行動に対して、より強い影響を及ぼしていることがわかりました。

「ガミガミ系」の上司は考える力を奪う

厳密に指示するというのは、「仕事量のことを厳しく言う」「規則に従うことを厳しく言う」「その日の仕事の計画や内容を知らせる」といった、いわば「ガミガミ系」のマネジメントです。専門的な言葉で「マイクロ・マネジメント」と言います。

つまり、マイクロ・マネジメントをすると、部下はある程度は動いてくれるようにはなりますが、それと同時にビクビクと配慮的になったり、言うことを聞かず批判的になったりしているということです。

「言ったことだけやる」「思うように動いてくれない」「自分で判断しようとしない」といった部下は、上司自身の行動と紐づいているのです。さらに、こうした管理職のマイクロ・マネジメント行動は、働き方改革・ダイバーシティ・業務量の増加によって促進されていることもわかってきました。

まとめて言い換えましょう。多くの管理職は多忙になると、「部下に考えさせる」ための時間の余裕を失います。するとプレイング・マネジャーでもある管理職は、部下に「あれやっておいて」「いつまでにこれをやっておいて」という自由度の少ない指示を出し、行動レベルで直接コントロールしようとします。