労働改善はアニメ大国・日本よりも進んでいる

実はアメリカでは近年、アニメーターや特殊効果部門でもクリエイターの組合結成が進んでいる。弱い立場の労働者が連帯しようという動きはエンタメに限らず、スターバックスやAmazonといった比較的新しい業態でも進み、ちょっとしたトレンドとなっている。

昨年行われた全米自動車組合のストが、労働者にとって非常に有利な結果になったことも、組合への注目が高まる要因となっている。

交渉により賃金が上がると、プロデューサーやテレビ局にデメリットがあると考えがちだが、それはまったく逆だ。

賃金が上がれば、クリエイターの生活環境は良くなる。それが作品の質にも反映するのは当然のことだ。一方で、早く安く作品を仕上げたいあまりにプロデューサーが無理なスケジュールを脚本家に課せば、作品の質を下げて視聴者が離れてしまう。何より健康面で脚本家に負担がかかり、才能の寿命を縮めてしまうことにもつながりかねない。

逆にあらゆる面で環境が改善され、クリエイターがのびのびと仕事できるようになれば、作品の質も上がる。同時に制作予算も上がるから、全体として規模と質の底上げにもなるだろう。

日本のドラマや映画が、アカデミー賞などの賞を狙えるような世界で勝負できる作品をもっと作るためには、不可欠な動きではないだろうか。

NY州立大は「冨樫義博氏の健康問題」を紹介

日本のテレビドラマに比べ、一足先にグローバルな存在になっているのがアニメだ。特に世界で最もアニメ視聴人口が多いアメリカ(2位は日本)ではここ数年、アニメ制作者や漫画家の労働環境を懸念するファンの声が高まっている。

日本にはクリエイターを守る仕組みがないことを、アメリカのファンはよく知っている。

このままでは、好きなクリエイターのクオリティーの高い作品を見たり読んだりできなくなるのではないか、と心配しているのである。

ニューヨーク州立大学ビンガムトン校が発行する新聞「パイプ・ドリーム」の記事は「日本の漫画業界は、非現実的な納期を守るために、クリエイターが健康を害しかねないほど、過酷な労働条件を強いられている」と指摘する。

「『幽☆遊☆白書』や『ハンター×ハンター』の作者である冨樫義博は、慢性的な腰痛などの健康問題に悩まされてきた。何年もの間、机に座って絵を描くことさえできないほどだった。彼のような最も有名な漫画家でさえ、業界の過酷な現状に苦しんでいるのだ」とし、漫画家が質の高い作品を世に出し続けられるために改善すべきだと主張する。