人生の成功には「ポジティブ思考」と「ネガティブ思考」のどちらが有効なのか。サイエンスライターの鈴木祐さんは「ニューヨーク大学の研究によると、ポジティブ思考の学生ほど卒業後の就職オファーが少なく、給料も低かった。一方、ネガティブ思考の学生のほうが年収が高い傾向が見られた」という――。(第2回/全2回)
※本稿は、鈴木祐『天才性が見つかる 才能の地図』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
「自信があれば成功できる」は本当なのか
【猫師匠】「自信があれば成功できる!」といったアドバイスを耳にしたことはあるかな?
【弟子】「根拠のない自信を持て!」とか「人生の成功は自信で決まる!」みたいなやつですよね。確かに、自信さえあればすべてに積極的に取り組むでしょうし、それだけ成果が出そうですけど。
【猫師匠】ところが、話はそう簡単でもない。例えば、オハイオ州立大学などのチームが、自信に関する過去の研究81件をまとめたメタ分析を見てみようか。メタ分析の説明はもういいかな?
【弟子】いっぱいデータを集めることで、ひとつだけのデータを見るよりも、信頼度が高い結論を出せる研究法のことですよね?
自信と仕事のパフォーマンスは無関係だった
【猫師匠】だいたいそんな感じだ。これによると、自尊心と仕事のパフォーマンスの相関は0.26だった。この数値は、統計的には関係があると言えるが、現実にはほとんど無関係と言っていいレベルだ(※1)。
この数値をもとにざっくり計算すると、人生の成功において、自尊心の重要さが占める割合は9%前後だと言える。
※1 この研究では、自尊心(自分に対して抱くポジティブな感情)と、自己効力感(自分が目標を達成するための能力を持っていると認識すること)の両方が、仕事のパフォーマンスに影響するかどうかを見ている。結果、自尊心の相関は0.26で、自己効力感の相関は0.23だった。