ポジティブな人ほど挫折に弱い

【猫師匠】また、データでは、ポジティブな人ほど挫折ざせつに弱い傾向も確認された。将来に対して楽観的な態度を保ち続けようとすると、ものごとが上手くいかなかったときのショックが大きくなるからだ。

膝を抱えてうなだれる人のイメージ
写真=iStock.com/recep-bg
ポジティブな人ほど挫折に弱い(※写真はイメージです)

【弟子】いつも未来がうまくいくと思ってたら、事前の準備もサボりそうです。

【猫師匠】実際、ポジティブ思考は、長い目で見ると逆にうつ状態の原因になるという報告も多いんだ。ある実験では、参加者にポジティブ思考をすすめたところ、気分が良くなったのは直後だけで、1カ月後には逆にうつ状態が増加していた(※6)

さらに、普段からポジティブ思考をしている人ほど長期的に抑うつ状態になる確率が高く、その効果は7カ月後にも確認された。

※6 こちらもニューヨーク大学などの研究で、67名の学生を集め、全員に「クライアントにビジネスの拡張を提案するところをイメージしてください」と指示。学生たちに自分の空想のポジティブ度をランク付けさせ、この作業を12パターンくり返させている。

ネガティブ思考は悪いものではない

【弟子】ポジティブなせいで病んじゃうって本末転倒ですね……。

【猫師匠】そもそも、ネガティブ思考は悪いものではない。つねに最悪の状態を考えておけば、それだけ未来のトラブルへの備えができ、結果として将来の不安を減らせることも少なくない。

これは「防衛的ペシミズム」と呼ばれる心理で、エピクテトスやセネカといった古代ギリシャ・ローマの哲学者たちも使ったメンタル改善の技術だ(※7)

※7 「防衛的ペシミズム」は、ウェルズリー大学の心理学者ジュリー・ノレムらが提唱する概念。過去に自分がどれだけ良い結果を出したかにかかわらず、あらたな目標に対して低い期待値を設定する認知戦略を意味する。特に不安になりやすい人ほど、ポジティブ思考を使うよりも、防衛的ペシミズムを使ったほうがうまくいく事実が、複数の研究で示唆されている。