生活維持サービスの充足率が最も低いのは新潟県

日本地図上にプロットした2040年の生活維持サービスの充足率と2030年の数値を表にした図表3も、あわせてご覧いただきたい。

生活維持サービスの労働力の充足率が最も低いのは新潟県であり、なんと58.0%である。6割を切っており、生活維持サービスに必要な担い手が半分ちょっとしか存在しない計算となる。同様に京都府も58.6%と極めて低い水準だ。

【図表3】生活維持サービスの充足率の推移
出典=リクルートワークス研究所

新潟県と京都府について共通して言えるのは、「一定の経済規模があり、観光や製造業などの“外向けの産業”がありながら、住民の生活維持サービスにも人材を供給しなくてはならない」という難しさだ。ともに現在の人口規模も200万人を超えており、GDP(県内総生産)も8~10兆円前後と経済規模もある。

また、新幹線など交通の便がいいこともあり、近年ではインバウンド需要やモノづくりの需要(外向けの産業)も高い。もちろん、経済成長につながるような外向けの産業の需要が高まっていることは決して悪いことではない。しかし、労働供給制約下において十分な働き手・担い手を輩出できなければ、二兎を追うのは難しくなってしまう。魅力的な職場となるかもしれない外向けの産業があることで、地域の生活維持サービスの担い手が吸い取られてしまうのだ。

31道府県で充足率が75%以下に

この構造は、一定の経済規模があり外向けの産業が期待できるほかの地域でも共通する今後の課題となっていく(たとえば、4番目に充足率が低い長野県〈60.1%〉、5番目に低い兵庫県〈62.9%〉についても共通する状況がある)。担い手の数が減るが、二兎を追わなければならないいくつかの地方が、課題が最も顕在化する地域となる。

また、3番目に生活維持サービスの充足率が低いのは岩手県で、59.1%と新潟県、京都府と並んで6割を切っており非常に厳しい状況である。ただ、人口規模は現在100万人台前半であり経済規模も全国で真ん中あたり(2022年で29位)である。

もちろん外向けの産業と生活維持サービスの二兎を追う必要もあるが、担い手側の生産年齢人口の減少や近隣への流出といった課題が大きい地方と言えるだろう。

いずれにせよ、生活維持サービスの充足率が75%を切っている地方は31道府県におよんでおり、これは4人必要な仕事を3人で取り組まなければならない水準だ。これほど広範囲で労働供給制約による生活維持サービスの提供が不十分で、困難な状況が生まれると考えると恐ろしくもある。逆に、充足率が90%を超えている都府県は6つしかないのだ。