なぜ3人の女性はマスキングテープの活用法に気付いたか

日本最初のマスキングテープは和紙を素材とするものだった。和紙は従来の素材だったクレープ紙より薄く、塗料との段差がほとんど生じない長所があった。しかも、手で簡単にちぎれるし、一気に引き剥がしても途中で破れたりしない強度を持っていた。こうしたマスキングテープとしての利点以外に和紙には素材感や透け感、手でちぎったときの風合いといった特徴もあった。実は、どこに貼ってもきれいに剥がせ、色が豊富で、独特の雰囲気を醸し出す和紙のマスキングテープの特徴に目を付けた3人の女性がいた。1人は東京都世田谷区にあったギャラリーカフェのオーナーAで、残り2人はカフェの常連客だった。

建築塗装現場で使用されるマスキングテープ(右)。封筒を装飾する雑貨としての活用例(左)。

Aはペンキ塗りが半ば趣味で自宅の壁やオートバイの塗装を日常的に行っていた。その際に、ホームセンターで購入したマスキングテープを使い、余りをカフェで使った。カフェをオープンしたのは2002年。オープン当初から彼女はマスキングテープを本来の用途以外で使っていた。来店客が店で本や小物を購入した際、紙の袋に入れ黄色など色のついたマスキングテープでとめていた。来店客の中にはカフェで商品を購入した後、店内で飲食し、再び商品を購入する者がいた。そうした商品の二度買いに対して同じ袋で商品包装する場合、マスキングテープなら剥がしたときに袋は傷まないし、テープに紙素材が付着しないので美しく使える。また、Aは作家や他のギャラリーから届いたダイレクトメールを店内に貼るのにも同テープを使っていた。壁がコンクリートだったことやダイレクトメールにピンで穴をあけずに掲示できたからだ。Aはさらに、マスキングテープの色の豊富さを活かしいくつかの色を組み合わせて「楽しさ」も演出していた。