売り上げを捨てる決断

僕は、1つの決断をしました。売り上げがどんどん大きくなっていた、受託の仕事やPRの仕事をやめることにしたのです。

たしかに大きな売り上げをもたらしてくれていましたが、自分たちが最終決定できない、そして自分たちの名前やブランドが前面に出ない仕事はやめようと決断したのです。

自分たちで配給する映画は、納得したものを買い付けていました。しかし、請け負いでPRだけをやる場合には、必ずしも納得したものを扱っていたわけではありませんでした。ミーティングやらお付き合いやらでも、多大な時間を取られていました。

映画を観て、これは本当に観るべき映画なのか、と疑問に思っていたとしても、お金をもらっていたら、どうにかPRするしかない。美辞麗句を並べてプロモーションすることになるわけですが、自分の中には納得感はありませんでした。本心ではもうやりたくなかったのです。

「心を殺してしまうような仕事はしたくない」

僕が改めて思ったのは、こういうことでした。

「お金は儲かるかもしれないけれど、心を殺してしまうような仕事はしたくない。社会的に意義があることをやりたい」

受託やPRの仕事を継続したいというスタッフの独立と同時に、僕は事業から撤退しました。僕にとっては正しい選択でした。

ただ、受託の仕事は会社の利益の大部分を稼いでいました。会社は苦しくなりました。やがて、会社はどん底の状況に陥りました。34歳のときのことです。