※本稿は、アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
なぜ人間の脳は「孤独」を嫌うのか
歴史上、群れから追い出されることは確実に死を意味しました。人間にとってグループはそれほど大事なので、なぜ脳が孤独を大きな危険だとみなすのかも理解出来ます。
長期間孤独でいると、脳は「何かあった時に誰も助けてくれない」と受け取ります。そのため普段以上にその人を警戒させ、常に最悪の事態に備えさせるので、深く眠れなくなります。
また「闘争か逃走か」の状態に入るので、脳に「他の人は自分に敵意を持っているかもしれない」というシグナルが送られてしまいます。誰も助けてくれないのですから、油断するよりも警戒しておいた方が良いのです。
狩猟採集民ならそれで命が助かったかもしれませんが、現代の私たちには悪い影響の方が大きくなります。周りから見ると、その人はとげとげしく、疑ぐり深く、思い切り嫌な人に見えてしまうことがあるからです。
引きこもりになってしまうきかっけ
他人をネガティブに捉えるようになると、長期的には引きこもってしまう恐れもあります。
「みんなで集まる時にも私には来てほしくないんだろうな。だったら行かないでおこう」そんな風に考えてしまうので、簡単に負のサイクルに陥ります。その結果誰からも誘われなくなり、それを脳は「やっぱりそうだった」と解釈するのです。
「ほらやっぱり、私には来てほしくなかったんだ――」そうしてますます引きこもるようになっていきます。
大切な友人が連絡を取りたくなさそうだったり、誘っても興味がなさそうだったりした場合でも、その人が本当に人付き合いを避けたいのではなく、孤独のせいかもしれないということを知っておくといいかもしれません。
それでも根気よく連絡を取り続け、集まる時には誘いましょう。楽しいことをする時に誘わないと、「あなたはもうグループに属していない」というシグナルになってしまいます。