「いいアイディアを出してください」はNG

ある製造業のお客様で、新商品開発のブレーンストーミングで決定することを禁止する行動実験をしました。アイディアを出してもすぐに否定する年配者が複数いたので、アイディアを出す発散時間と決める時間を分けるルールにしたのです。すると、以前よりも出されるアイディアの量が2倍以上になり、その中にいいアイディアが含まれている確率が高まっていきました。

「いいアイディアを出してください」と言うと恐縮して意見が出にくかったのですが、「否定しないのでどんなものでもアイディアを出してください」と声かけをしたら、アイディア量が増えたのです。このルールの下で行われたブレーンストーミングを計120時間以上記録して分析したところ、どのようなアイディアでもうなずく人が増え、発言者も発言数も増加していました。こうしてアイディアがたくさん出るようになると、予定された時間よりも早く会議が終わることが分かりました。

意見を出しやすい空気を作ったことで、「会議の時短」につながったのです。このように、一流は、ただ時間を「節約」するだけでなく、その時間を「有意義に使う」方法を実践しています。そして、それが真の「時短」であり、一流と呼ばれる所以なのです。

一流は、反対意見にもしっかりうなずく
うなずきは、同意の意味だけでなく、発言しやすい空気も作る

上司の一方的な話は苦痛でしかない

想像してみてください。毎週月曜日の朝、9時半から週次会議が始まります。そして、上司がまた同じ話を始めます。

「みなさん、数字を上げるためにはコミュニケーションが大事です。コミュニケーションとは……」

講演会
写真=iStock.com/baona
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何度も聞いたことのある内容。この瞬間、「またこの話か」とその場にいる人は心の中で溜息をつくでしょう。

小学生のとき、校長先生の長話を苦痛に感じていた人は、多いのではないでしょうか。夏の暑い日に外に立たされて、同じ話を何度も繰り返して聞くのは苦行そのものだったと思います。この状況は、職場でも起きています。

218社を調査すると、管理職が一方的に話し続けるのを聞くのは苦痛だと感じる社員は、87%に上りました。一方で、その長い話を止めるのは現実的には困難です。評価者である上司に立てつくと、不利なことが起きると考えてしまう人が多いのです。しかし、上司の暴走を放置してしまうと、ただ時間が無駄にすぎていきます。これがもし日常的な出来事であれば、その累積は計り知れません。