睡眠の「質」を高める3つのポイント

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」では、成人の適性睡眠時間は“6時間以上”を推奨しています。ただし、適切な睡眠時間には個人差があります。最低でも6時間以上とし、ご自身に合った睡眠時間を見つけましょう。長く寝たのに疲労が十分回復していなかったり、夜中に目が覚めてしまう場合は、睡眠の「量」ではなく「質」を高めることが必要です。最後に睡眠の質を高める3つのポイントをご紹介します。

入浴は就寝2時間前に済ませる

入浴の睡眠への効果は加温効果にあり、これは運動をしたのと同じように、就寝前に体温を一時的に上げることができます。深い睡眠をとるには、就寝の2~3時間前の入浴が理想で、38度のぬるめのお湯で25~30分、42度の熱めのお湯なら5分程度入浴することで、寝付きへの効果は認められています。

有酸素運動の習慣化

継続的に運動の習慣をつけるのも効果的で、有酸素運動(早足の散歩や軽いランニング)がおすすめです。特に高齢者や不眠がちな方に効果的で、寝付きの良さと深い睡眠が得られるようになります。ただし、激しい運動は睡眠を妨げるので就寝前は控えましょう。特に夕方から就寝3時間前くらいのタイミングでの運動が最も効果的で、脳の温度を一過性に上げることがポイントです。そうすることで、床に入るタイミングで脳の温度が下がり、快眠が得られやすくなるといわれています。(厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」)

眠る4時間前のアルコール摂取は控える

アルコールは寝つきが良くなると感じる一方、睡眠の後半において眠りが浅くなったり、睡眠が分断されたりするなど、睡眠に対して悪影響を与えることが明らかになっています。アルコールは一種の麻酔薬なので、高い濃度を摂取すると脳が麻痺したり意識をなくしたりします。一方、少量では本能や感情をつかさどる大脳辺縁系の活動を高めることもあり、酔いが醒めてくる段階ではかえって脳の活動が活発化し、睡眠を妨げるのではないかと思われます。

また、睡眠時無呼吸症候群の人は、お酒を飲むと喉や舌根の筋肉が弛緩しかんしやすくなり、気道を塞いで睡眠時の無呼吸発作が悪化する可能性があります。特に、飲んで寝た時にいびきがひどくなったり、無呼吸が実際にある人は要注意です。実際に男性の場合、1日の飲酒量が1杯増えるごとに無呼吸の発症リスクは25%以上増加するという研究結果も報告されています。無呼吸の自覚がある方は、少なくとも就寝前4時間以内の飲酒は控えるようにしましょう。(Paul E. Peppard, et al. : Association of Alcohol Consumption and Sleep Disordered Breathing In Men And Women, J Clin Sleep Med. 2007 ;3(3):265-270.)

赤ワイン
写真=iStock.com/Mick Koulavong
※写真はイメージです

「睡眠時無呼吸症候群」が隠れている場合もある

深い睡眠を得るためには、眠る前に心も体もリラックスしていることが大切です。仕事や家事でストレスを受けた心身を、入浴や軽い運動などでリラックスさせてから布団に入ることで、質の高い睡眠につながります。

睡眠時間はしっかり確保できているのに疲れが取れないという方は、アルコールの部分で少し触れましたが、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害の可能性も考えられます。治療が有効な場合もありますので、かかりつけ医に一度相談してみると良いでしょう。

心身ともに回復するためには、「十分な睡眠時間」と、「質の良い眠り」の両方が必要であることをぜひ意識していただければと思います。

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