「睡眠時間9時間以上で健康に影響」寝過ぎもよくない

5万6953人の女性を対象にした海外の調査によると、睡眠時間が5時間以下の人は、睡眠時間が8時間前後の人と比較し、1.70倍肺炎になるリスクが高いことが判明しました。(Sanjay R Patel, et al. : A prospective study of sleep duration and pneumonia risk in women, Sleep. 2012 Jan 1;35(1):97-101.)

4419人の日本人男性を対象に調査した自治医科大学の研究では、睡眠時間が6時間未満の人は7~8時間の人に比べて死亡率が2.4倍高くなるという報告もあります。(Yoko Amagai, et al. : Sleep duration and mortality in Japan: the Jichi Medical School Cohort Study, J Epidemiol. 2004 Jul ;14(4):124-8.)

ただし、たくさん寝れば良いというわけでもなく、寝過ぎもまた身体によくありません。前出の肺炎リスクの研究では、睡眠時間が9時間以上になると睡眠不足と同様に肺炎リスクが上がることもわかっています。多くの研究でも、睡眠時間が9時間を超えると健康に影響が出る傾向が示されています。

目覚まし時計
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レム睡眠の不足と認知症発症リスクの関連が指摘されている

睡眠は疲労回復に必須です。人をはじめ哺乳類は、睡眠によって心身ともに完全な休養状態に入ります。睡眠中に脈や呼吸はゆるやかになり、血圧の低下や筋肉の緊張もほぐれます。体温が下がることで中枢神経も休憩し、身体は完全な休養状態となり疲労回復します。

睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠という2つの状態から構成されることは広く知られていると思います。寝入ってから1~1時間30分程度で完全な深い睡眠状態に入り、これをノンレム睡眠といいます。続いて目覚めているときと同じような浅い睡眠状態を呈するレム睡眠に移り、この2つの睡眠の型が一晩の間に2~3回交代します。ノンレム睡眠中のホルモン環境が疲労回復に欠かせないことは以前からわかっていましたが、夢が活発に生じるレム睡眠中の脳や体の回復への寄与は謎でした。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の林教授の研究によると、レム睡眠中に脳の毛細血管の血流が上昇することが確認されました。このことから、レム睡眠中は脳への栄養供給や老廃物除去などの物質交換が活性化している可能性が示唆されました。脳はレム睡眠によってリフレッシュされるので、レム睡眠が不足すると、こうした物質交換が正常に起こらず、脳細胞の機能低下や老廃物が蓄積するため、アルツハイマー病などの認知症発症リスクとの関連が指摘されています。(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構「睡眠中の脳のリフレッシュ機構を解明」2021年9月1日)