なぜジャニー喜多川氏の性加害問題は長年放置されてきたのか。元テレビ東京社員の田淵俊彦さんは「ジャニーズ事務所にたてつけば痛い目にあうという長年にわたる『刷り込み』がマスコミ各社に浸透し、自然と『はれ物』に触るような対応が習慣化した。テレビ局は忖度をすることで大きなメリットを得ていた」という――。
※本稿は、田淵俊彦『混沌時代の新・テレビ論 ここまで明かすか! テレビ業界の真実』(ポプラ新書)の第3章『病症Ⅱ:異常なまでの「忖度」をするという「だらしなさ」』の一部を再編集したものです。
テレビが「ジャニー氏の性加害」を黙殺した背景
1999年1月、世間を驚かせた記事が写真雑誌『FRIDAY(フライデー)』に掲載された。現在でも続いているこの雑誌は、当時は有名人のスクープをすっぱ抜くゴシップ雑誌として気炎を吐き、業界から恐れられていた。
そこに「スクープ‼ 女子短大生たちが衝撃の告白・ジャニーズJr.4人が溺れた乱痴気パーティー写真」と題して未成年であったジャニーズJr.の飲酒・喫煙が大々的に報じられ、社会的に大きな話題となったのである。
この問題は「ジュニアスキャンダル」と呼ばれたが、その真相は決して語られることはなかった。ジャニーズ事務所が徹底的な箝口令を敷いたからである。その裏事情をこの場で明かしてゆく。
実はこの問題にはテレビ東京が関係している。発端は当時、テレビ東京で放送されていた『愛ラブB.I.G.』という番組であった。この番組の担当者のところにある日、ジャニーズ事務所の広報担当から電話がかかってきた。
「メリーさんが呼んでいる」
メリーさんとは、ご存じのようにジャニー氏の姉のメリー喜多川氏のことである。当時はジャニーズ事務所の副社長として経営全般を取り仕切っていた。同時に、トラブル処理係でもあった。
何事かと慌てた担当者がジャニーズ事務所に向かったところ、3時間も待たされた挙句(問題の対応で大わらわだったことが後で判明する)、「FRIDAYに抜かれる。あなた、何してたの!」とメリー氏にえらい剣幕で怒鳴り散らされたという。