企業がCMにそのタレントを起用するかどうかという「バロメーター」は、番組に“よく”出ていて視聴者の認知度が高いタレントである。言い換えれば、人気番組に出演している、もしくは視聴率が獲れている(=たくさんの視聴者がその番組を見ているであろう)ドラマに出演しているような俳優なのである。

知らないタレントが宣伝をするよりなじみの深い俳優が宣伝したほうが、商品や企業の訴求力が上がるのは明白だ。したがって、CM契約を獲るための一番手っ取り早い方法は「常にテレビに出ていて、露出が多い」ということになる。だから事務所側もずいぶん先の予定まで所属俳優の出演を決めようとするのである。

流行の俳優をいち早く抑えられるテレビ側のメリット

俳優やタレントの賞味期限は限られている。その賞味期限は、本人どころか事務所にも計り知れない。いま売れている俳優であったとしても数年先はわからない。だが、そのタレントに先行投資をしていた場合には回収をしなければならない。

そんな理由から、局への影響力がある事務所はよい放送枠があればそこに自社タレントを「ベタ置き」することでリスクヘッジをするというわけだ。

テレビ局側にとっても制作が決まるたびに毎回頭を悩ませる主演俳優のキャスティングの手間が省けるばかりか、CMにも出演している“流行りの”俳優をいち早く押さえられるメリットは大きい。

担当のプロデューサーは自分自身が安心感を得られるのと同時に、そういったネームバリューのある俳優を押さえられる実績を社内外に誇示できる。

そこで登場するのが、「バーター」というシステムである。

メディアを支配する人のイメージ
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「バーター」というシステムが生み出す功罪

バーターはビジネスでは「交換条件」といった意味で使用されることが多く、「Give and Take」の関係に近い。

例えば、売れている俳優のバーターは何だろうか。事務所は人気のある俳優を差し出す代わりに、交換条件として「売り出し中の俳優」や「これから売り出したい俳優」を出演させるようにテレビ局に要求する。これがキャスティングにおけるバーターである。

よほど詳しい人でないと、普通の視聴者はどの俳優がどの事務所に所属しているかなどわからない。しかし、もしそれを知っていたら、主演俳優という「太陽」を取り巻く「惑星」のようにひとつのドラマのなかに同じ事務所の俳優がちりばめられていることに気がつくだろう。

ときには、事務所からの要求がなくても局側や制作会社のほうから出演者事務所への忖度がおこなわれ、「○○さんもどうでしょうか?」とか「○人くらいは何とかできます」などという提案によってバーター契約は効率よく進められてゆく。そのようにして、局や制作会社のプロデューサーと芸能プロダクションの蜜月関係は構築されてゆくのである。