忖度は、広辞苑では「他人の心中をおしはかること。推察」と解説されている。つまり忖度は“一方的に”おこなわれることで、そこには本来、「ウィンウィン」といった“相互的な”利害関係はないはずである。

しかし、テレビ局と芸能事務所の間には、れっきとした利害関係が存在する。そのことが、さまざまなゆがみや腐敗を生んでいる。

テレビドラマは通常「ワンクール」と言われる3カ月単位で番組が入れ替わる。昔はもう少し長いスパンだったが、時代の流れで放送も時短化した。そして各局が目玉としているドラマ枠の主演俳優は、ほとんどが数年先まで決まっている。

「決まっている」と言ったが、もちろん、これは公表されていないし一部の当事者しか知らない。暗黙の了解である。いわゆる「握り」というもので、「では、○○年の○月クールは誰々さんで宜しく」的なテレビ局と芸能プロダクション間の慣習的な約束事である。

テレビはあくまでも宣伝媒体

みなさんは決まった主演俳優が局を違えて立て続けに出ているのを目にして、「なんかおんなじ出演者ばかり見るなぁ」と感じたことはないだろうか。あるとしたら、その感覚は正しい。

ドラマの内容や脚本家、共演者などのいわゆる「座組み」。時間帯や時間枠などの「枠組み」。それら2つの「組み」がまったく決まらないうちに主演俳優を「ベタ置き」するから、そういう現象が起こるのだ。

実はテレビに出ている有名人が食べてゆくための収入源は、テレビではない。番組の出演料など、たかが知れている。テレビはあくまでも宣伝媒体に過ぎない。タレントや俳優、アーティストやその事務所にとっては、自らを宣伝できる「場」を提供してもらっているだけなのだ。

スタジオに設置されたテレビカメラ
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例えば音楽番組の場合、フジテレビの『ミュージックフェア』の番組制作費は1100万円くらい、テレ朝の『ミュージックステーション』でも1800万円止まりとそんなに高くない。

あれだけたくさんの豪華なアーティストが出ているのに、どうしてそんなに制作費が抑えられるのか。それは、アーティストにとってテレビ出演は楽曲売上のためのプロモーションと考えられているため、出演料が高くないからである。

CM契約を取るための手段

では、有名人の生活の糧はどこにあるのか。

そう、CMだ。テレビ局がおもにスポンサー企業のCMを流す枠を売って収益を上げているように、CMなどの宣伝には莫大な金銭が動く。タレントやその事務所にとっても、CM契約を獲れるかどうかということが死活問題であり、そのタレントの価値を決めると言っても過言ではない。

事務所はCMを獲得しようと躍起になる。それはそうだろう。契約が一本取れれば、数千万円の世界である。