「過去」を手がかりに対処法を探す

現状が把握できたあとは、対処できるかを考えるのですが、産業医の私が対処方法を知っているわけはありません。そこで産業医の質問は、相談者の「過去」の経験に向かいます。

今の状況は、過去の経験と比べてどうなのか。過去は達成できていたのか。達成できていない時はどうやって挽回したのか、または、どのようなことになったのか。過去に、達成できないことはあったのか。その時はどのようなペナルティがあって、どうやってクリアしたのかなどを聞いていきます。

一緒に過去を振り返り、少し前向きに考えられるようになる方が多いですが、中には初めての経験で、不安や悩みから抜け出せない人もいます。

すると産業医は、「未来」へ目を向けてもらおうと考えます。今期はダメだったけれど、来期(来月/来年)の見通しはどうか。どうすれば同じことを繰り返さないですみそうか。うまくやっている同僚は、どうしているのか。などなど、自分だけでなく、周囲に目を向けることもお勧めします。

過去、現在、未来の3方向を示す標識
写真=iStock.com/R-J-Seymour
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「最悪、どうなってしまうのか」

それでも、明るく前向きになれない場合はこの質問です。

「最悪、どうなっちゃう可能性があるのか。ノルマが達成できないと何が嫌なのか、不安なのか」

産業医が聞いてきた答えはさまざまです。上司に叱られたり小言を言われたりするのが嫌な人が多いですが、他にボーナスが減ることを恐れる人、プライドが許さない人、単にノルマ未達成ということが嫌な人、同僚たちに負けるのが嫌な人、クビの可能性があるから不安な人などもいます。

「その不安へは何か対処していますか?」

多くの人は、どうして不安なのかあまり考えておらず、ゆえに対処もしていません。もちろん、対処できるものは対処をお勧めしていますが、ほとんどの不安は数週間以内には実現しないこともお伝えしています。