甲子園優勝→ゴルフで113勝を挙げたジャンボ尾崎
中でも、野球と同じく「打」の要素が絡むゴルフで大成功を収めたのは、尾崎3兄弟の長男で、「ジャンボ」の異名を持つ尾崎将司だ。
尾崎は徳島海南高のエースとして1964春のセンバツで優勝投手となり、翌65年に西鉄に入団。67年限りで引退した後、70年にプロゴルファーへ転向し、これまで世界プロツアー最多の113勝を挙げた。当時としては珍しい、300ヤードを超える圧倒的な飛距離は、野球で鍛えた強靱な肉体があったからだ。
野球で培われるのは、何もフィジカルの強さだけではない。ラグビー日本代表のプロップ(PR)で活躍する稲垣啓太は、捕手として活躍した中学時代、投手の配球や打者の仕草をノートに毎日書き留めていたという。そういった入念な準備が、「スクラムの職人」とも呼ばれる専門性の高いポジションでの状況判断につながっている。
ただ、野球離れが進めば、他競技への転向例も当然少なくなる。追い打ちをかけるように、子どもたちの体力や運動能力も低下の一途を辿っている。
「野球離れ」は日本スポーツ界の危機でもある
スポーツ庁の公表によれば、11歳男子ソフトボール投げ平均値は、1980年度の35.14メートルから、2022年度に20.31メートルと過去最低を記録。コロナ禍で運動経験が不足していることに加え、ボール遊びを禁止する公園などが増え、外で気軽にキャッチボールができなくなったことも要因として挙げられる。
将来の野球界を守るための活動も各地で行われている。日本プロ野球選手会(広島・會澤翼会長)は、9人1組で、時間内にキャッチボールをどれだけ多くできるかを競う「キャッチボールクラシック」を毎年開催し、子どもたちに「投げる」機会を提供。また、保護者の経済的負担を少しでも和らげるために、バットのサブスク(月額レンタル)サービスを導入したり、使用可能なグラブを再生して低価格で販売したりする店舗も徐々にではあるが、増えてきた。
少子化の波はあらゆる方面に及び、野球を含めた競技人口の減少は避けられそうにない。ただ、今後の取り組み次第で、減少幅を“微減”に食い止めることはできる。大人が知恵を出し合い、日本スポーツ界の裾野を守っていく必要がある。