「国際テロ」は日本でも起きている
――同様の事例は日本でも起きているようですね?
2023年1月ごろ、オランダ在住の民主活動家の中国人男性のもとに、日本の西新宿三丁目交番から電話がかかってきました。男性の名義で付近の高級ホテルの部屋が予約され、そこに「爆弾を仕掛けた」というテロ予告がおこなわれたというのです。もちろん、男性はホテルの予約もしていないし、爆弾もしかけていない。
全世界の高級ホテルに『ブッキング・ドットコム』などで虚偽の予約をおこない、予約金もしっかり払い込んだ上で、部屋に爆弾を仕掛けたとニセ通報をする。これはEU圏の中国の工作員が多用する攻撃手法で、オランダ人ジャーナリストを含む複数の被害者が確認されています。日本の高級ホテルも、この工作のターゲットにされているようなのです。
政治的動機にもとづいて経済活動や公共サービスを意図的に混乱させ、第三者に損害を与える行為は、規模の大小を問わず「テロ」と定義されます。中国は日本に対して、堂々と「国際テロ」を仕掛ける国になっているわけです。
「自由な社会」は工作員に好都合
――中国の工作員の行動は取り締まれないのでしょうか?
彼らの行動が活発なEUの場合、たとえば殺人予告は「軽犯罪」とみなされる。なので、オランダ在住の活動家に殺害予告をおこなった工作員が、ドイツやベルギーなどの隣国に逃げてしまえば、事実上のお咎めなしになります。
EU加盟国間では出入国管理が撤廃されているため、外国人でもパスポートチェックや税関審査を受けずに国境を越えられます。
一方、中国国内でホテルに宿泊したり高速鉄道に乗ったりすると、常に利用者の位置情報が当局に補足されていますから、仮に外国の工作員が同様の行為をすればすぐに拘束されるはず。
西側先進国の「自由」な社会は、中国の工作員にとって非常に活動しやすく都合が良いという現実があるのです。(後編に続く)