2つの脳内物質を掛け合わせる「幸福の掛け算」
【先生】お金をもらったら、必ず感謝するのです。たとえば、仕事でプロジェクトが大成功して大きな額のボーナスをもらったとしましょう。そのときに、「仕事が成功して嬉しい!」「ボーナスをたくさんもらって嬉しい!」だけだと、すぐにその喜びは劣化するんです。
【ゆかり】ふむふむ。ドーパミンは劣化しやすい喜びですもんね。
【先生】しかし、同時に、「同僚の○○さんが手伝ってくれたからプロジェクトがうまくいった、ありがたいな」「上司がきちんと見守ってくれて、しかも、しっかり評価してくれて嬉しいな」という思いを持てたらどうでしょうか?
【ゆかり】達成の喜びだけじゃなく、感謝の気持ちも混ざりますね。
【先生】そう。感謝するとオキシトシンが分泌されます。ドーパミン的幸福がオキシトシン的幸福にミックスされ、転化されるんです。そうなると、この幸福は長続きしますし、何度でも新鮮な感覚を味わえます。これを「幸福の掛け算」と呼びます。
【ゆかり】すごい……! 必殺技じゃないですか! 「幸福の掛け算」って、ネーミングからして幸せの高まりがすごそう。
【先生】「ドーパミン的幸福は得がたいうえに長続きしないから、オキシトシン的幸福とセロトニン的幸福で我慢しなさい」という話ではないんですよ。ドーパミン的幸福も長続きさせて、「3つの幸福」全てを手に入れる。そんな欲張りなことが、できるのです! お金で言えば、稼いだときの嬉しい気持ちを、「得た喜び」ではなく「人の役に立った喜び」だと考えるようにすると、毎回、長く続く幸せを感じられるというわけです。
お金を使うときも感謝する
【ゆかり】ということは……もしかして、お金を使うときも感謝の気持ちを持つのが大事なんでしょうか?
【先生】お、鋭いですね。どうしてそう思ったんですか?
【ゆかり】だって、何かを手に入れるのもドーパミン的幸福ですよね。物を買うのにはお金がいりますよね。そこに感謝の気持ちがなければドーパミンしか分泌されないので、「もっと! もっと!」の沼に溺れそうだなって。
【先生】その通りです。買い物中毒という立派な依存症もありますからね。
【ゆかり】やっぱり。じゃあ、お金をもらったときと同じように、使うときにも「ありがとう」という気持ちを持てばいいんですか?
【先生】そうなんです。たとえば私は、チェーンの牛丼屋さんや駅の構内にある立ち食いそばのお店によく行くのですが、「こんなに安い金額でこんなにおいしいものが食べられてありがたいな」と毎回思うようにしています。そうすると「幸福の掛け算」になりますから喜びが長続きします。そして、次に行ったときにもまたおいしく味わえるんです。
【ゆかり】感謝の気持ちを持つとドーパミン的欲求の暴走を抑えられるってことですよね。やっぱり、お金を使うときも同じと。
【先生】あとは、お金を使って何かを手に入れたり経験したりすること自体を「楽しむ」のが大事です。お金は稼ぐことよりも「使い方」が大事なんですよ。使い方によって、ドーパミン的幸福にもセロトニン的幸福にもオキシトシン的幸福にもなりえます。