「働きたいけど難しい」という人に向いた仕事とは

筆者の講演では遺言書についても触れています。

「確かに、私の講演では、お子さんが働けない前提での生活設計についてお話していますが、まだそう決めつけるのは早いのではないでしょうか? ご長男はまだ24歳ですし」

自分が講演で話した内容を否定するわけではないのですが、ご本人が少しでも働けて収入が得られれば、将来の状況は大きく変わります。遺産分割で長女にがまんしてもらう必要もなくなります。

もっとも、生活リズムが乱れている今の状況では、就職して仕事を継続していくことは、そう簡単ではないでしょう。

「障害福祉サービスの中に、就労移行支援、就労継続支援というものがあります。利用をしてみてはいかがでしょうか」

障害福祉サービスは、障害者の人が利用できる福祉サービスです。ヘルパーさんが自宅に来てくれる居宅介護やグループホームに入居する共同生活援助など、いろいろなサービスがあり、障害の状態や希望に応じて、サービスを選んで利用できます。

費用は一部利用者負担がありますが、本人の所得によって上限が設けられており、それほどの負担ではありません。さまざまなサービスのメニューの中で、就労移行支援と就労継続支援は、「働きたいけど難しい」という人に向いています。

ラテを作っているバリスタの手元
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです

就労移行支援は、一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を行います。このサービスを利用して訓練を受けることで、生活リズムができ、就職に必要なマナーやコミュニケーション術を身に付けることができます。また、同じ状況の仲間と触れ合うことで、モチベーションのアップにもつながります。

就労継続支援は、一般企業での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識および能力の向上のために必要な訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と結ばないB型があります。A型であれば、それなりの給与が出ますので、自立につながることが期待できます。B型はわずかな工賃ですが、それでも働いてお金を得ることで自信につながるでしょう。