長男に少しでも収入を得られれば老後ライフは明るく
「このサービスを利用できるのは障害者だけですよね」
私の説明を聞いていた父親が口をはさみました。
「うちは、主治医の先生にも、障害年金を受給できるほどの障害ではないと言われていますし、対象ではないと思いますが」
「障害年金の受給に比べて障害の程度が軽くても、サービスの対象になりますので、可能性はありますよ」
「障害者というのはどうも……そこまでしなくても……」
どうやら、父親は自分の息子が“障害者”とされることに戸惑いがあるようでした。
「お気持ちは理解いたします。ただ、レッテルにこだわって利用しないのでしたら、もったいないですよ。それよりもご長男が今の状況から変わるきっかけになれば、その方が良いでしょう」
「まず私が前向きになることが大切ですね。長男が少しずつでも前進できるようにサポートしたいと思います」
後日、父親から状況の報告がありました。
「ご紹介された障害福祉サービスの利用について、本人に話してみました。まだ利用の申請まではしていませんが、障害者手帳の申請に行くと言っています」
「それもよいですね。障害者手帳を保有していると、一般企業への就職がしやすくなります」
一定規模以上の企業では、障害者の雇用が義務付けられています。
「まずは外に出て、人と触れ合うことができるようになれば、次の行動につながっていきます」
ご本人が前向きな気持ちにならなければ始まりませんが、すぐに仕事を、ということではなく、まずはできる範囲のことから始めてみるとよいでしょう。障害者手帳の申請や障害福祉サービスの利用が、その後の成長へのきっかけになることでしょう。
もし、定期的な収入を得られるようになれば、山下さん夫婦の老後ライフは余裕ができ、自分で稼いで貯めたお金の一部を自由に使えるようになる可能性がグンと高まります。