試験時間1分あたりの出題語数が2.76倍に大幅増加
英語の比重が必ずしも高くない大学の学部でも、英語が合否を決めるポイントになってきていると指摘するのは、英語塾J PREP代表の斉藤淳氏だ。
「大学入試では英語の問題がかなり難化しています。そのため、しっかりと勉強して力をつけた人とそうでない人との差が大きく出るようになってきています。つまり、大学入試は英語で決まる、といっても過言ではないのです」
難化の例として斉藤氏は、日本がバブル景気に沸いていた1989年の共通第一次学力試験と2023年の大学入学共通テストの英語問題を比較して見せてくれた(図表2参照)。試験時間1分あたりの出題語数が2.76倍になっているのだ。
なぜ大学入試の英語が難しくなってきているのか。背景には、受験生の英語力の高まりがあるという。
まず英語教育の早期化だ。小学校で英語学習が導入されたことで、中学生、高校生の英語力が格段に上がっている。簡単に、しかも安価で英語を学べる教材が増えたことも、受験者の英語力を高めた要因の一つだという。発音の練習など、スマホでダウンロードしたアプリを用いれば、隙間時間にいくらでも学べるのだ。
そのうえ、若い世代で「英語ができると儲かる」という認識が広まっているという。
「日本で医師になって働くと、生涯収入は5億円くらい。アメリカに留学して大学院で経済博士課程を修了し、GAFAMなどのテックジャイアントに採用されたら10億円くらい。そう比較して考えるようになってきているのです」
こうした理由から、受験生の英語力は飛躍的に上昇している。
「試験というのは、できる子とできない子とを識別するために行われます。受験生の母集団の英語力が向上した以上、問題を難しくして差を見つけていくしかないのです」
難問のため、しっかりと力をつけないと点が取れない。英語をちゃんと学んだか否かが、合否に大きな影響を与えるのだ。
斉藤氏が苦笑しつつ、早稲田大学OBたちのぼやきを紹介してくれた。
「早稲田といえば、かつては全国各地から学生が集まっていたもの。しかし最近は、東京で暮らす帰国生ばかり合格している。もっと地方の学生が入れるようにすべきだ」
もちろん首都圏、地方に関係なく、英語力を磨くことが大事なのだが。