新卒採用の段階で収入に差も
同時に、日本の雇用環境も大きく変化してきている。現在の日本では新卒一括採用が主流だ。総合職として入社した新入社員は、多くの部署で経験を積みながら育成されていく。しかし日本企業でも終身雇用が廃れ、転職が増える流れが加速すると予想される。
「統計によると、日本人が一つの会社に勤続する年数は、平均で11.9年です(厚生労働省「2020年賃金構造基本統計調査」)。ヨーロッパでは8〜10年、アメリカでは4.1年ほどです。企業のグローバル化によって日本でも労働力が流動化していき、欧米並みの勤続年数になったとき、日本企業がこれまでのように採用費や社員教育費をかけるでしょうか。英語は入社してから覚える、という図式が成り立たなくなっていくと思われます。
新卒に関しても、育成前提の一括採用から即戦力のジョブ型採用に変わっていくでしょう。若いうちからビジネス英語を使えるかどうかで、収入に差が出てくるのです」
産業構造も大きく変化している。かつては重厚長大企業が幅を利かせ、世界の企業ランキングの上位を日本企業が独占したものだ。しかし今は、GAFAMをはじめとした海外のIT企業が上位を占める。この傾向はさらに続くだろう。
「IT、DX(デジタルトランスフォーメーション)、そして英語。これらの知識があれば、どこの国に行っても働けます。外資系、国内の企業とも、優秀な人材を得るため高収入を約束してくれるのです」
国内企業でも、優秀な外国人を採用し、社内公用語を英語にしている企業は増えている。
一方で、AI(人工知能)技術の進化により外国語を覚える必要などなくなるのではないかという意見もあるが……。
「たしかに翻訳アプリを利用しても、すでにかなり精度が高い状態です」と、横川氏は前置きしつつ、「でも実際に使ってみて感じるのですが、わずかですが翻訳のための時間がかかるので、この間合いによって調子が狂うんですよね。また文章、言葉としては正確だったとしても、話し手の感情や思いは伝わりません。会話というのは、言葉に感情を乗せて話すものです。抑揚などは、いくら学習してもAIでは置き換えにくいのではないでしょうか」という。
やはり、高い英語力を身につけておくに限るようだ。
横川友樹氏
ヒューマングローバルタレント代表取締役社長
2007年、早稲田大学スポーツ科学部卒業。ベイカレント・コンサルティングを経て10年、同社に入社。20年より現職。グローバル人材の転職市場に深い知見を持つ。