「実数」と「自然数」が同じ個数だと仮定すると…
有理数と自然数の個数が同じ。これは、当時の数学界に激震をもたらす大発見でした。そんな無茶苦茶な理論を前に、「無限の研究をするなんて無意味だ」と多くの数学者は主張するようになります。
しかし、そんな声はどこ吹く風。カントールの研究はここで終わりません。有理数まで調べたのですから、当然、「実数」についても調べることになります。
実数は数直線上に表されたすべての数のことです。
なので、実数は自然数よりも圧倒的に多いと予想できますが、自然数と有理数が同じ個数なのですから、実数も同じ個数なのかもしれません。
そこで、実数と自然数が同じ個数だと仮定してみます。この仮定が正しければ、すべての実数を数え上げ、次のようなリストを作れるはずです。
さて、ここからがポイントです。
並べたそれぞれの実数に次のような印をつけ、そして、印をつけた数字だけを取り出して並べます。最後に、それらの数字すべてに1を足します。
すると、上のリストの場合、このようにして得られる数は2.26938……という実数です。
「普通の無限」と「でっかい無限」
さて、この実数2.26938……はリストの中にあるでしょうか?
1番目の実数と比較してみましょう。1番目の実数の1桁目に1足した実数なのですから、1番目の実数と違うことは明らかです。
同じように、2番目、3番目の実数とも、必ず2桁目、3桁目が違います。
つまり、新たに作ったこの実数は、リストの中に存在しない実数であることがわかります。
しかし、このリストにはすべての実数が書かれているはずです。にもかかわらず、リストにない実数が発見されてしまいました。
これは、最初に仮定した「実数と自然数が同じ個数」が間違っていたということを意味します。
つまり、実数と自然数は1対1に対応しない。すなわち、実数の方が自然数よりも多いのです。
カントールは「実数の方が自然数よりも多い」という発見だけでなく、自然数や有理数のような「普通の無限」と実数のような「でっかい無限」があるということも発見したのです。