ボストンの医者が「リモート執刀」も可能に
それはともかく、わたしがここで紹介したいのは、孫さんが、アーム社を買収することによって、世の中に何をもたらしたいと思っているか、という点だ。
かれはそれを説明するために、医療現場への活用を例に挙げた。
いま、ダビンチという手術ロボットがあるのは知っているだろうか?
たとえば、京大病院に、すごく繊細な脳外科の手術が必要な患者がいたとする。残念ながら、京大病院にはそれができる医師がいない。というより、その手術ができる医師は、世界に一人しかいない。そのくらい難しい手術だ。しかし、その医師がいるのは地球の裏側、ボストンだ、としたら?
そこに登場するのが最先端の手術支援ロボット、ダビンチだ。これを使えば、その地球の裏側にいる天才脳外科医がリモートで執刀できる。
SFではない。実際にすでに技術的には可能になっている。そして、それを可能にしているのが、5Gという高速大容量の通信インフラであり、その通信インフラを使って現場で執刀するのがダビンチであり、そこに用いられているのが、アーム社のチップだ、というわけだ。
大風呂敷を広げるだけで終わってはいけない
メスを入れる場所が少しでもずれてしまったらどうするんだ、と心配するかもしれないが、実は、人間の指だって揺れる。むしろ、ロボットアームがAIで人間の指の揺れをコントロールする。京大病院では7~8mmの孔に内視鏡カメラとロボットアームを挿入して、微細で緻密な内視鏡手術手技が適応できる症例がどんどん増えている。
さすがに、脳外科手術まではいっていないが、前立腺がんや食道がんや直腸がんなどの手術などには用いられ始めていて、人間が行うよりはるかに少ない出血量で外科手術ができる。成功率も高いと実証されている。
孫さんの話はこの辺でやめておこう。メガロマニア系の代表として紹介させていただいた。
復習すると、メガロマニアというのは、要は、あいつ、いつもでかいこと言っているねって言われるようなやつのことだ。人から敬遠されがちではあるけれど、もし、そういう傾向が自分にもあるとしたら、それは誇らしいことだと思っていい。
もちろん、常に大風呂敷を広げるだけで、何も行動しないというのは論外だ。お話にならない。大風呂敷を広げたら、それに向けて、目の前のことから始める、一生懸命続ける。行動が伴うのであれば、いつか事をなし得る。必ず成功する、というわけにはいかないが、やり続けるのみだ。