孫正義が見たAIと人間の「新しい世界」

では、孫さんは、具体的にはどういう未来を想定しているかというと、「インターネットや電話が普及したとはいえ、場所によってはまだつながっていないところがあるが、これから先はつながらないところがない時代がやってくる。地球が衛星ですべて覆われてしまう。そして、人だけでなく、モノもつながれていく。人とモノが通信することで、巨大なビッグデータが無限に構築され、今度はそれをスーパーな人工知能(AI)が解析する。AIと人間がお互いに賢く鍛え合っていく時代を我々は構想している」と、想像を絶するような新しいデジタル革命が産業構造を変えていくことを力説しているのだ。

いまから6年前のものだが、ちっとも古くない。というか、いままさに誰もが実感できるレベルになってきていることを、6年前に話していたわけだ。

Googleが投資した「人を超えるロボット」

この予見に基づき、孫さんは当時、複数の大きな買収を行った。そして、その講演の会場に、買収した会社のCEOを呼んでいた。

最初に登場したのは、ボストン・ダイナミクスというロボットの会社だ。実はわたしもそれ以前から注目していたのだが、なぜ注目していたかと言うと、Googleが投資して、育てていた会社だからだ。

かれらが開発していたロボットとは、CEOのマーク・レイバートという人がそのとき話した言葉を借りれば、「人と同じくらいの視覚とインテリジェンスを持つ、人を超える存在のロボット」だ。

軍事用に使われているものは、結構YouTubeにも上がっているが、とにかく驚くようなロボットで、ちょっと言葉では説明できない。簡単に階段を登っていったりとか、でこぼこ道を二本足で行進していったり、人が倒そうとすると、それを避けたり、それに耐えたり、転がったら起き上がったりと、まさにSFの世界に出てくるロボットだ。ぜひ、一度、検索してYouTubeで見てみてほしい。

残念ながらソフトバンクはWeWorkへの投資が頓挫した余波で、このボストン・ダイナミクスを手放すことになる。買収したのは韓国の自動車メーカーのヒュンダイ(現代)自動車だ。