東方神起と進学問題のすれ違いから自立を決意

離婚を考え始めたのは、子どもの進学の問題に直面した頃だ。「勉強ができなくても子どもの好きな分野を伸ばしてあげたかった私と違い、夫は進学校に行かせるのが当然という考えで、言い争うことが増えていきました」。室町さんが40代の初めに韓国アイドルの東方神起にハマり始めたとき、ライブへ行くのを猛反対されたことも溝を深める一因となり、いずれ夫と別れることを前提に自立のため就職しようと動き始めた。

アルバイト以外で一度も働いたことがなく、「ワードとエクセルの違いも分からなかった」ため、ハローワークの職業訓練に10カ月間通い、パソコンの基礎を身に付けた。自宅近くには研究機関が多く、求人を調べると多くで英語力が採用条件になっていたことから、イギリス生活で高めた英語力を本格的に磨き直そうと決意。履歴書には20代の初めに取得した英検準1級の資格を書き、安価な教材を探し、CD付きの月刊誌『ENGLISH JOURNAL』(アルク ※休刊中)で学び始めた。

いざ就職しようと研究機関の求人に片っ端から応募するも、不採用続きで苦戦するなか、10個目の応募先だった環境関連の研究所のアシスタントとして採用された。「外国人研究者のサポートや、行事のために海外からゲストを招く際のメールのやり取りなど、英語を使った事務手続き全般の仕事でした」。空き時間には環境関連の英語の文章やニュースに触れ、業務以外のことも「何かの役に立つかも」という姿勢で英語を学んでいた。

40代で英語を学び直し、職を得て、自信と自由を得た

その後、契約期間満了とともに近隣の大学の事務職に転職し半年勤務した後、もといた研究所の高度技能専門員の求人を見つけ、採用される。「英語力とある程度の専門知識が高度技能とみなされたので、アシスタント時代に環境関連の英語を積極的に学んでいてよかったです」。仕事内容は、環境に関する英語のウェブサイトのコンテンツ制作の補助。以前のアシスタント業務と違い、英語と専門知識を使う仕事で、年収が80万円ほどアップした。1年半後、さらに年収の高い研究機関の国際課の求人に応募して採用され、現在で5年目になる。「働き始めた11年前よりも年収は160万円ほどアップ。下の子どもたちの大学進学も控えていたので、少しでも収入を上げたい一心でした」。

仕事と並行して続ける英語の勉強も着実にレベルアップを図ってきた。現在は友人から譲り受けた英検1級の問題集に集中的に取り組む。「英検1級は対外的に英語力を示すのに分かりやすい指標になる」と、無期雇用での再契約や転職に有利になるよう1年以内の取得を目指す。「受験料がもったいないので、一発合格を狙っています」。

専業主婦時代は、進学校だった高校の同級生の活躍を見るにつけ引け目を感じていた。それが、40代で英語を学び直し、職を得てスキルアップを重ね、自信と自由を得た。「勉強は、生活のためのお金を稼ぐ手段であり、世界を広げてくれるもの。勉強もお金を稼ぐことも大変ですが、持続することで自分を変えていける」。子どもが全員家を出た今、この先の夢を描く。「70歳くらいまで今のような仕事を続け、いずれ通訳ガイドかJICAのシニアボランティアとして海外で働きたいです」。