「職場での会話がうまくいかない」復職後にぶつかった新たな壁

体調が完全に回復しないまま育休を終えて復職すると、新たな壁にぶつかった。「職場での会話がうまくいかない自分に戸惑いました。赤ちゃんを相手にばかり話す生活をしていたので、文章を組み立てて論理的に会話をすることが、うまくできなくなっていたんです。また、育児のために定時退社が必要な私のため、上司は業務量を軽減してくれていたのですが、3カ月ほどたって業務理解が追いつくと物足りなくなり、その先のキャリアをうまく思い描けなくなってしまいました」。

全力で仕事に没頭していた出産前には想像しなかったモヤモヤした気持ちと向き合うなか、「息子との時間も大切にしながら、自分が本当にやりたいことを仕事にしていきたい」という思いが芽生えてくる。やりたいことを深掘りした結果、女性のキャリアを応援したいという気持ちにたどり着いた。「男性中心の業界で女性の営業職として海外赴任も経験するなか、一部の人から期待されていることと男性社会を生きる現状とのギャップを感じていました。そうした経験を踏まえて、後輩の女性たちが私のような苦労を極力せずに、子育てとも両立しながら望むキャリアを築けるように応援したいと思ったんです」。

オンラインで学び、キャリアコンサルタントの資格を取得

自身のステップアップと自分のキャリアを見つめ直すことを目的に、キャリアコンサルタントの資格を取得しようと、23年2月からパソナのキャリアコンサルタント養成講習をオンラインで受講。半年間の学びを経て資格を取得した。「キャリアコンサルタントは相談者が自分の適性や能力、関心に気づき、自分に合った仕事を選択することをサポートする役割。資格を生かして社内で人事に関わる仕事がしたいと上司にも伝えています」。

キャリアコンサルタントの学びの課程で、アメリカの心理学者、ウィリアム・ブリッジスが提唱した「トランジション・モデル」が印象的だったと振り返る。「転機や節目における理論で、転機の第1段階には『終焉しゅうえん』があり、第2段階の『中立圏』を経て第3段階の『開始』で何かが始まるという考え方。私は子どもを持つという目標が、出産したことによって終焉し、モヤモヤした時期を経て、新しいことを始めようとしている。何かの終わりが変化のスタートだという考え方にはとても納得し、今の私の学びを肯定してもらえているような気がします」。