第3段階の「再凍結」では、新しいものの見方や考え方が結晶化し、新しいシステムに適応するものとして、より快適なものと感じられるようになり、恒常性の感覚が再び蘇ってきます。この段階では、根付きつつある新しいものの見方や考え方が、実際に効果を上げるのだという実感を持たせることが重要になります。

そのため、変化を主導する側は、新しいものの見方や考え方による実際の効果をアナウンスし、さらには新しい技能やプロセスの獲得に対して褒賞を出すなど、ポジティブなモメンタムを生み出すことが求められます。

最初にやるべきは「いままでのやり方を忘れる」こと

レヴィンによれば、ある思考様式・行動様式が定着している組織を変えていくためのステップが、この「解凍=混乱=再凍結」ということになるのですが、ここで注意しなければならないのは、このプロセスが「解凍」から始まっている、という点です。というのも、この「解凍」というのは、要するに「終わらせる」ということだからです。

私たちは、何か新しいことを始めようというとき、それを「始まり」の問題として考察します。当たり前のことですね。しかしクルト・レヴィンのこの指摘は、何か新しいことを始めようというとき、最初にやるべきなのは、むしろ「いままでのやり方を忘れる」ということ、もっと明確な言葉で言えば「ケリをつける」ということになります。

変革は「何かが終わる」ことで始まる

同様のことを、個人のキャリアの問題を題材にしながら指摘しているのが、アメリカのウィリアム・ブリッジズです。ブリッジズは、人生の転機や節目を乗り切るのに苦労している人々に集団療法というセラピーを施してきた臨床心理学者です。

ブリッジズが臨床の場で出会った患者は千差万別であり、ひとりひとりの「転機体験」は非常にユニークなもので一般化は難しい。転機の物語も人それぞれにユニークなものだったはずですが、「うまく乗り切れなかったケース」を並べてみると、そこに一種のパターンや、繰り返し見られるプロセスがあることにブリッジズは気がつきます。

そしてブリッジズは、転機をうまく乗り切るためのステップを「終焉しゅうえん(今まで続いていた何かが終わる)」→「中立圏(混乱・苦悩・茫然自失する)」→「開始(何かが始まる)」という3つのステップで説明しています。ここでもまた、変革は「始まり」から始まるのではなく、「何かが終わる」ということから始まっている点に注意してください。