組織変革が中途半端に挫折してしまう理由

ブリッジズに言わせれば、キャリアや人生の「転機」というのは単に「何かが始まる」ということではなく、むしろ「何かが終わる」時期なのだ、ということです。逆に言えば「何かが終わる」ことで初めて「何かが始まる」とも言えるわけですが、多くの人は、後者の「開始」ばかりに注目していて、一体何が終わったのか、何を終わらせるのかという「終焉の問い」にしっかりと向き合わないのです。

ここに、多くの組織変革が中途半端に挫折してしまう理由があると、私は考えています。経営者と管理職と現場の三者を並べてみれば、環境変化に対するパースペクティブの射程は、経営者から順を追って短くなります。

経営者であれば、少なくとも10年先のことを考えているでしょうが、管理職はせいぜい5年、現場になれば1年の射程しか視野に入っていない。常に10年先のことを考えている経営者であれば、やがてやってくる危機に対応して変革の必要性を常に意識しているかも知れませんが、管理職や現場は常に足元を見て仕事をしているわけですから、十分な説明もなしに「このままでは危ない、進路もやり方も変える」と宣言されれば、十分な「解凍」の時間を取れないままに混乱期に突入してしまうことになります。

平成は「昭和を終わらせられなかった」時代

同様のことは「社会の変化」についても言えます。平成という時代をどうとらえるか、これからおびただしい論考が世に出されると思いますが、私が思うのは「昭和を終わらせられなかった時代」ということです。

私たちは「山の頂上」で、昭和から平成への移行を経験しています。平成が始まったのは1989年の1月8日で、日経平均株価が未だ破られていない史上最高値を記録したのも同じ1989年の12月29日でした。当時の時価総額世界ランキングを見てみると1位の日本興業銀行を筆頭にトップ5には全て日本企業が並んでいます。言うまでもなく、現在の日本企業で時価総額世界ランキングのトップ10に入る企業は存在しません。

このような状況下、つまり文字通り経済面での世界的な覇権が明確となった状況で、昭和から平成へとバトンが渡されている。しかしみなさんもご存じの通り、その後このピークを超えることは一切なく、平成の時代を通じて日本は下降に次ぐ下降に終始することになります。