自分とは違う環境だからうまく育てられない

そういう記事を見ると、女房にけんか吹っ掛けて、何だ、これは、おかしいじゃないのというわけ。自分が貧乏して苦労して偉くなったんだから、若い者も俺と同じようにしろと、なぜ言わないんだろう。それでお金もらって楽させたら、じゃあ若い人はよくなると思っているのかなと。そうすると女房が、そんなへその曲がったことを言うもんじゃないと、そういう議論になるわけです。

だけれども、この問題を私は案外深刻な問題かなと思っています。なぜかといいますと、私どもが親としての世代として考えてみると、子どもに自分の育った環境とはまったく違う環境を与えてあげている。そうすると、親が子どもの教育ができなくて、当たり前なんですよ。違うんだから。違うことをやらせちゃっているわけですから。

これがどこまで効いてくるかというと、影響はかなり大きいんですね。

晴れた日の屋外で幼い子供を抱きしめる父親の手
写真=iStock.com/Julia_Sudnitskaya
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日本は過去を白黒はっきりさせるのを避けてきた

世界遺産に広島の原爆ドームが登録されたときに、日本の代表がじつは根回しをしました。新聞に出ていたと思いますが、どういう根回しをしたか。世界遺産に選ぶことの意味づけについて一切議論しない、しないでくれという根回しをいたしました。

そして、それに対して、中国とアメリカが文句を言ったんじゃないけれども、態度を保留した。つまり、日本はどういうつもりで、どういう意味合いであれを保存しようとするのかと。この根回しは、ご存じのように核兵器反対とか、そういうことを正面に出したくないということでやったんだと思いますが、極めて日本型です。はっきりとさせないで、ともかく登録するという点では、それは成功したわけです。

それはよろしいんですが、皆さんもお気づきだと思いますが、中国なり韓国なりが日本に対して言うことがあります。それは歴史のことです。近ごろは慰安婦問題というのがありまして、私のところに分厚いコピーを送ってきた方があります。それは現在出ている教科書です。使われている教科書のコピーでして、こういうふうに書かれていますと。それはけしからんという人なんですが、とにかくそういうふうに歴史に関して議論がいろいろある。