子どもの教育に自信をもてなくなった理由

今申し上げていたことでおわかりだと思いますが、少なくとも私どもの世代は、自分が育った育ち方をよしとしない。はっきり言えば、カボチャとサツマイモと、半ズボンと、あれはまずかった。だから子どもには冷蔵庫を開ければいつでも食べ物が出てくるようにしてと、こういうふうにやっている。

養老孟司『こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~』(扶桑社)
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そうすると、つまり自分の過去を否定してしまった人というのは、他人にどうしろと言えなくなるということに気がつきます。それが今申し上げた歴史観の問題ですね。

ですから、それを大げさにしていきますと、日本という国がどういうふうに動いてきたかということを、どういうふうに把握するかということが言えなくなるんです。

違うやり方もいいでしょうと。やってみて、違う育ちかたをした今の子どもが大きくなってみますと、これはちょっとおかしいんじゃないかと、今度は言い出す。これも変な話であって、自分自身の育ちを肯定するのかしないのか、まずそれがあるわけで、それをうっかりといいますか、ある意味で全否定してきたのが現代ですから。そうしますとわけがわからなくなって当然だなと私は思うようになりました。

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