人間は死んだら「モノ」なのか、それとも「ヒト」なのか。解剖学者・養老孟司さんは「死体というのは実は3種類ある。そのことを多くの人は意識していない」という。講演録をまとめた『こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~』(扶桑社)より、一部を紹介する――。
棺桶に手を置いた女性の接写
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人間の子どもを連れて歩いてる感覚

私は解剖学が専門で、亡くなった方の身体を扱うという職業を、30年以上やっていますが、おかげでいろいろなことを勉強させていただきました。じつは私はカバンの中に子どもを持ってきています。胎児の標本です。最近このようなものができるようになりました。水を抜いて、樹脂によって固めてあります。

私はどういう感覚でこれを持っているかというと、人間の子どもを連れて歩いてるという感覚でいるわけです。普通の方はどうもそう思わないようです。「先生なんか人間がモノに見えるんじゃないですか」と言われます。若いときはそうかなとも思っていたんですが、だんだん腹が立ってくるわけです。

なんで腹が立つかというと、モノに見えるって言われても本人はそういう気がしない。じゃあ一体どういうふうに見えてるんだろうと自分で考えるわけです。

3カ月だと9センチ、生まれるときは50センチ

たとえば普通の方にこの標本を見せますとよく聞かれることがあります。要するにヒトに見えます。「この子、何カ月ですか」という質問です。

胎児をよく見たことがないという人がほとんどです。ですから大きさで月齢がほぼわかるんですよ、と説明します。この標本ですと大体十数センチ、20センチ足らずになります。

胎児の大きさからどのくらいの月数かというのを判断するのには、簡単な計算をします。1カ月から5カ月までは月数を二乗してセンチに直せば、大体頭からお尻までの大きさが出ます。ですから3カ月でしたら3×3が9、9センチということになります。じゃあ5カ月過ぎたらどうするかといったら、そこから先は5をかければよい。

そこから先はちょっと伸びが遅くなりますので。5カ月でちょうど5×5、25センチになります。6カ月になると5×6で30。7カ月になると5×7で35。生まれるときは50センチ、5×10カ月ですね。