日本連合ラピダスはこの変化を活かせるか

TSMCなどの半導体製造企業も、最新のチップ設計技法に習熟しなければならない。今後のチップ設計の方向性を把握する。“GAA(ゲート・オール・アラウンド)”と呼ばれる新しい半導体の構造への対応力を高める。そのために、TSMCもアームのIPOに参加した。

足許、世界の半導体産業では、どの企業の守備範囲がどこまでか、線引きは一段とあいまいといってもよい。設計者と需要者が組む、生産者と設計者が組む、あるいは、設計・製造・需要の三者が連携する。多種多様な事業運営のパターンが出現するだろう。

世界の半導体産業の変化が勢いづく中、わが国ではラピダスが次世代の、回路線幅2ナノメートルのロジック半導体工場の建設に着手した。ラピダスは2ナノのチップ設計を実現した米IBMなどと連携し、2025年の試作開始を目指している。

回路基板製造のライン
写真=iStock.com/SweetBunFactory
※写真はイメージです

「いいモノを作れば需要がくる」発想は通用しない

今後、半導体の設計分野ではアームなどの技術を用いつつ、オープン・アーキテクチャな設計体制が目指される可能性もある。そうした変化を重ねつつ、半導体の設計・製造・需要の役割は、よりダイナミックに入れ替わることになるだろう。

わが国の半導体関連企業にはかなり大きな影響が出る。常に、先端のモノを作っていれば需要がやってくるとの発想は変えざるを得ない。

わが国の半導体関連企業は、微細化などの加速に対応しつつ、多様な事業環境の変化に対応するための選択肢を増やすべきだ。共同して事業を行う体制(コンソーシアム)を組む重要性は高まる。新しい製造技術の開発に必要な経済的な負担、期間の長期化などのリスクも高まるだろう。

リスクを分散しつつ環境変化への対応力を引き上げるため、より多くの選択肢を確保することは欠かせない。なるべく需要者が必要とするものを、タイミングよく製造し、変化に耐えられる体制を整備する。それが、わが国の半導体産業に求められる。