電力会社は民間なのに料金が国に規制されている

電力会社からすれば、昨年度決算で大幅な赤字に転落した段階では、値上げをしないと赤字から脱却できないという危機感があった。また、国からの補助金もすべて料金抑制に充当していて会社が懐に入れているわけではない、という思いが強い。事実、補助金で利益が上がったわけではないが、お金に色はないので、結果的に「値上げする必要があったのか」「補助金はいらないのではないか」という疑問がわくのは当然だ。

そもそも電力会社は民間会社にもかかわらず、料金が国に規制されている。一方で、原料費が上がった場合には、その分を自動的に料金に転嫁する「燃料費調整制度」が続いている。毎月の輸入燃料価格の変動に応じて、燃料費が上昇した場合には電気料金の「燃料費調整額」が加算され、燃料費が下がった場合には「燃料費調整額」が減額される仕組みになっている。

もちろん、燃料コストを計算して、それを料金に転嫁するにはタイムラグがあるので、昨年のように急ピッチで原油価格が上がった場合には価格調整が追いつかず、結果的に赤字が膨らむことになった。

支援策が出たところで、LNG価格が落ち着いてしまった

さらに、今年6月には軒並み家庭用の電気料金が大幅に引き上げられたが、これは燃料費調整とはまた別の話だ。ベースの電気料金を引き上げたのである。インフレで燃料費以外の様々なモノの値段が上がり、コストが上昇していることも要因だが、昨年度の大幅な赤字で毀損きそんした財務体質、つまり自己資本を穴埋めする必要があるというのが電力会社の主張だった。消費者担当大臣だった河野太郎氏が値上げ計画にクレームを付け、値上げ幅を圧縮させたのは記憶に新しい。

ベースの料金の値上げに加え、燃料費がさらに上がっていけば、消費者の負担はたまったものではない。そこで導入されたのが補助金の支給だったが、こうした「支援策」が出そろったところに、LNG価格が落ち着くという事態が重なったわけだ。予定していたよりもさらに利益が出て、世間の批判を一気に浴びることとなったのである。

エネルギーコスト上昇のコンセプト
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