少子化の原因は絶対人口減だけではない

少子化問題というと、原因を子どもの数の減少だと勘違いしている人がいます。実際は子どもの数ではなく、そもそも産む母親の数が減っている「少母化」であることは繰り返し当連載でもお伝えしてきました(〈政府の対策は「ひとりで5人産め」というようなもの…人口減少の本質は少子化ではなく「少母化」である〉参照)。

路上で缶ビールを飲む若者
写真=iStock.com/SAND555
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なぜ「少母化」になるかといえば、出産する対象年齢の女性の絶対人口が減っているからです。

出生の9割を占める20~39歳の女性の総人口は、国勢調査によれば、1995年の約1708万人に対して、2020年は約1317万人と24%も減少しています。これは、1995年の当該年齢者がちょうど第2次ベビーブーム期に生まれた層であるのに対して、2020年の当該年齢者は1981~2000年生まれであり、すでに少子化が始まっている頃に生まれた層だからです。

本来であれば1990年代後半あたりに第3次ベビーブームが来るはずでしたが、それは来ませんでした。この「失われた第3次ベビーブーム」が発生した段階で、以降の少子化は決定づけられたのです。

しかし、絶対人口減だけが決定要因ではありません。ただでさえ減った人口に加えて、未婚率が上昇し、当該年齢の有配偶女性人口が減った。つまり、婚姻数が減ったからです。

以降、1995年と2022年の数字の比較で詳細に見てみましょう。

原因は「若者の恋愛離れ」という大ウソ

年間出生数は約119万人から77万人に減りました。減少率は35%です。一方婚姻数は、同79万組から50万組に減りました。減少率は36%です。どちらも総人口よりも大きく減少していますが、注目したいのは、婚姻数が減った分だけ出生数が減っている点です。なんなら、婚姻数減少より出生数減少のほうがマシなくらいです。これは、結婚した夫婦の産む子どもの数は少なくとも1995年とほぼ変わらないことを意味しています。

「子育て支援は1人→2人にするものであり、0人→1人に増加させる少子化対策にはならない」と私が言っているのはそういう事実に基づいたものであり、だからこそ子育て支援偏重の政府の少子化対策は的外れと申しています。

しかし、こうした反論も寄せられます。

婚姻数が減っているのは、若者の価値観の問題であり、「草食化」や「恋愛離れ」によるものだというわけです。少子化の話題でテレビが報道する際に、よく街頭インタビューで高齢者が「最近の若者は意気地がないからなあ。俺なんかが若いころはガツガツとアタックしたものだった」などという勇ましい声が流れるのですが、これもまたよくある老人のイメージだけの問題です。