業界初だった「液体ソース」

なお、カップ焼きそばでは「一平ちゃん」(明星食品)や「マルちゃん ごつ盛り」(東洋水産)なども人気だ。即席ラーメンで知られるメーカーが手がける商品が強い。

また、北海道はエリア限定で販売される「やきそば弁当」(東洋水産)、東北では「焼そばバゴォーン」(同)の人気が高く、同調査でも裏づけられた。現地での知名度は高く、前者は通称「やき弁」で親しまれている。

九州における袋麺「うまかっちゃん」のような現象が、カップ焼きそばでも起きていた。

東西の雄「ペヤング」と「U.F.O」の横顔も簡単に紹介しよう。

「ペヤングソースやきそば」は、1975(昭和50)年の発売。まもなく誕生半世紀だが、「発売当初から一度も味付けを変えていない」(まるか食品)というロングセラー商品だ。

「屋台のやきそばをイメージして作られたため、業界初の『四角い容器』が採用されました。また、今では一般的な液体ソースも、美味しさとコク・混ぜやすさを追求し、業界で初めて採用されました」(まるか食品・五十嵐さん)

筆者撮影
「ペヤング」と「U.F.O.」のソース

一方、「日清焼そばU.F.O」は1976年の発売。カップ焼きそばでは後発だが、容器は業界初の「丸い皿型容器」。味だけでなく、さまざまな仕掛けで売り上げを伸ばした。当時話題となった「UFO」(未確認飛行物体、昔は空飛ぶ円盤といわれた)を思い起こすネーミング。人気絶頂だったピンク・レディー(1977年発売の大ヒット曲は「UFO」)を起用したテレビCMを覚えている人もいるだろう。

西日本の濃厚ソースはお好み焼き由来

カップ焼きそば以外では、焼きそばの麺には「ゆで麺」「むし麺」「生麺」もあり、各地に焼きそば専門店もある。

「ゆで麺・むし麺・生麺は、それぞれ食べた時に食感が変わりますが、焼きそばソースは東日本がウスター系、西日本はお好み焼き文化の影響を受けた、こってり系です。ただ、ソース焼きそばがすべてではなく、北海道ではあんかけ焼きそばが多いのも特徴です」

こう話すのは、食文化研究家としてメディア出演も多い、熊谷真菜さん(日本コナモン協会会長)だ。今年20年を迎えた同協会の設立者で、たこ焼きやお好み焼きへの造詣も深い。

「2006年から始まったB-1グランプリでは第1回、第2回と富士宮やきそば(静岡県)が連覇。第4回では横手やきそば(秋田県)がグランプリに輝くなど、注目を集めました。ソース焼きそばの始まりは戦後といわれていましたが、戦前から東京・浅草のデンキヤホールが提供していたといわれます。具材は豚肉とキャベツ、中でもキャベツが中心でした」(同)

筆者は東日本大震災後の2012年以降、何度も被災地を訪れて復興企業を取材した。その際に知ったのが「石巻焼きそば」(宮城県)で、二度蒸しした麺の茶色さ、飲食店では目玉焼きをのせて提供するスタイルも興味深かった。

筆者撮影
石巻市内にある「八鶏飯蔵」の「石巻焼きそば」

「日本コナモン協会が行う『鉄板会議2023』のテーマは『やきそば』で、各地のやきそばの会にもご協力いただきました。焼きそばは東日本に専門店が多い特徴があります」(同)

10月19日に大阪で行われた鉄板会議では、石巻茶色い焼きそばアカデミーの木村均さんも登壇した。北関東には「太田焼きそば」(群馬県太田市)、東北地方には「なみえ焼そば」(福島県浪江町)もある。前述の富士宮や横手など、東日本勢の存在が目立つ。