日本と欧米のレストランには決定的な違いがある。飲食店プロデューサーの稲田俊輔さんは「欧米のレストランは、男女のカップルを想定客としている。ひとり客を歓迎する日本のレストランとはまったく異なる」という――。(第2回)

※本稿は、稲田俊輔『お客さん物語 飲食店の舞台裏と料理人の本音』(新潮社)の一部を再編集したものです。

ボロネーゼを食べる女性
写真=iStock.com/Malkovstock
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お店の人は「ひとり客」を歓迎しているのか

ひとり飲みや食事など、一人で飲食店を利用してみたいけどなかなか踏ん切りが付かない、なんて話をよく耳にします。世の中には居酒屋はもちろん、寿司や焼き肉でも平気で一人でふらっと入る人たちはいくらでもいますし、フレンチやイタリアンなどのちょっといい店でも普段から一人で楽しんでいる人たちだって少なくない。

そういう人たちに言わせれば、

「踏ん切りが付かないも何も、普通に行って普通に楽しめばいいんですよ」

ということになるのでしょうが、最初は躊躇してしまう気持ちも、もちろんわかります。

お店の人は本当に「ひとり客」を歓迎してくれるのだろうか?

周りのお客さんに変な目で見られないだろうか?

手持ち無沙汰になってしまわないようにするにはどう過ごせばいいんだろう?

これまでいろんなタイプのお店をやってきた僕が「お店の人」の立場から言うと、「ひとり客が嫌」という感覚は全くありません。そもそも持ちようがありません。特に僕の場合「店の一番の売りは雰囲気でも接客でもなく料理そのもの」という感覚でずっとやってきた部分が大きいこともあり、あくまでおいしい料理が目当てできてくれることの多いひとり客はむしろ嬉しい存在です。

ビジネス的にはありがたい存在

一人だと支払い金額が少なくて嫌がられるのではないか、という心配もあると思います。確かに、テーブル席オンリーで、それが常に満席に近い状態で埋まっているような店においては、ひとり客は売上を落としてしまいかねません。しかしそういう店は極めて限られています。多くの店にはカウンター席がありますし、そうではない店は最初から席数に余裕のあるところが多い。

そしてあえて生臭い話をするならば、ひとり客は(料理をたくさん楽しんでくれるので)客単価が高く、なのに在店時間も短めです。飲み食いよりもむしろお喋りに夢中で長々と逗留するグループ客よりも、ビジネス的にはありがたい存在だったりもします。

真剣に料理を楽しんでくれて、売上にも効率的に寄与してくれるひとり客。むしろ最高のお客さんです! ……と言い切ってこの話を終わりたいところなのですが、残念ながら世の中はもう少し複雑だったりもします。