※本稿は、小野尾勝彦『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
同業他社と差別化が図れず「民事再生」
――最初に「ガチャガチャの森」をつくられた経緯について、お話しいただけるでしょうか。
【長友】当社は1958年の創業で、当初は喫茶店やデパートの食堂などに置かれていた自動おみくじ機を扱っていました。その後、アミューズメント事業とカプセルトイ事業に参入していきましたが、リーマン・ショックの煽りを受けて2009年に民事再生手続きの申し立てを行うことになりました。
再生計画をつくるうえで、ガチャガチャのビジネスモデルは基本的に「軒先商売」で、機械の設置場所を借りて歩率何%を払うというものでしたので、同業他社との差別化が難しいという問題がありました。売り場を増やせば売上は伸びるものの、同時にコストも嵩みます。結局はキャッシュが残らないという壁にぶち当たってしまいました。もう一度戦略を見直そうと思ったのが2014年のことです。
――そのとき、現在の「大人の女性も楽しめる専門店」という着想を得られたのですか。
【長友】2012年から「コップのフチ子」が大ブレークしていて、お客様の中に「大人女子」が結構来られていることはつかんでいました。ならば、マニアや子ども相手ではなく、大人の女性が落ち着いてガチャガチャを楽しめる場所を展開してみようという考えに行き着いたのです。それが2017年に第1号店がオープンした「ガチャガチャの森」です。
大人の女性が回しても恥ずかしくないように
――「ガチャガチャ専門店」というまったく異なる新たなコンセプトのお店を出店するにあたって、どんなことに気を配られたのでしょうか。
【長友】従来型の店でガチャガチャを回している女性を見ていると、お店の表側からは見えにくい、裏側の機械で買われているんですね。ならば内装を明るくおしゃれにして、敷居を低くしてあげることで大人がガチャガチャを回していても恥ずかしくないという雰囲気をつくってみようと考えました。
そして、内装のデザインや商品の陳列の仕方などを試行錯誤しながら少しずつ変えていきました。また、カプセルの中身を見せるためのディスプレイも設置しています。従来のガチャガチャ売り場では考えられないことですが、自分たちを小売業であると考えたら当たり前の発想です。