新聞などで使われている日本語表現にも、微妙な表現がある。「違和感を感じる」や「犯罪を犯す」などはそのまま使っていいのか。毎日新聞校閲センターがまとめた書籍『校閲記者も迷う日本語表現』(毎日新聞出版)から一部を紹介しよう――。(第1回)
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「違和感を感じる」に違和感はあるか

【質問】
「違和感を感じる」という表現に違和感はありますか?

【回答】
違和感はない……16.4%
話し言葉ならよいが、書き言葉だと違和感あり……42.1%
話し言葉でも書き言葉でも違和感あり……41.4%

書き言葉に関していえば8割以上が「違和感あり」と回答しました。「感」の重なりが気になるという人が予想以上に多いという結果となりました。機械的に「違和感がある」もしくは「違和感を覚える」にするというルールを作ってしまえば楽かもしれません。しかし簡単にはその措置に踏み切れない理由を並べてみましょう。

明鏡国語辞典3版には「『違和感を感じる』は、重言だが広く使う」とあります。明鏡には「重言のいろいろ」というコーナーがありますが、「違和感を感じる」は「『不適切な重言』ではないもの」という区分に入っています。重言であることは認めるけれども、表現としてはおかしくないという立場です。

三省堂国語辞典8版では「『違和感を感じる』は重言とされるが、『快感を感じる』など、同様の言い方は昔からふつうに使われる。『違和感を覚える』とする方法もあるが、意味は同じ」と説明しています。

2021年11月に開催された日本新聞協会の新聞用語懇談会でも同様の意見が出ました。「罪悪感を感じる」「危機感が感じられない」といった表現でも「感」は重なっているのにあまり問題とされず、「違和感を感じる」だけがやり玉に挙げられている▽「感じる」と「覚える」で意味が変わるわけではない以上、「違和感を覚える」に直すのは小手先のその場しのぎに過ぎない――。